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阿修羅天世(改稿中)  作者: 鈴政千離
第二章 城和国編
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第17話 琵琶鼓城

 大門をくぐり、琵琶鼓城びわこじょうを歩く。

 はちゃめちゃ緊張する……!!

 広い……広すぎる!!

 庭っていうか、城内にも武具屋、素材屋、薬屋など琵琶鼓人が普段から使いそうな店が並んでいる。

 後で法具を買っておこうか。


 にしても城和国、この国は良い音だなー。

 歩いてるだけで太鼓や笛、琴が聞こえてくる。

 つい踊りたくなるような心が躍動しそうになる音響だ。

 そして、どこか落ち着く。和やか。


(良い事じゃ。近ぅ代われ、余も踊りたい)


「ダメに決まってんだろ、アホ」 


 受付嬢に足を運び、琵琶鼓人としての登録を行う。

 名前登録し、申請書にベガを費やす。

 なんか、こんな小さな紙っぺらにも金がかかるんだな……この先不安。

 受付は五分で済み、一つの札を貰った。

 黒札、琵琶鼓人になった者が最初に貰う色だ。


 所持している札色によって、琵琶鼓人のランクが示されている。

 下から順に、黒、白、黄、緑、赤、青、桃、紫。

 八色あり紫に行くほど琵琶鼓人としての価値が高い。

 戦闘面に秀でているという事だ。

 札色によって受けられない依頼があったり、大切な要素だったりする。

 報酬の変動もあるしな。


 はぁ、頑張ろ……。


「まずは、どれをするか」


 依頼の提示版は巨大で、依頼主も色々。

 個人や団体、民の声や自警団や警備隊など秩序部隊による援軍要請などなど。

 依頼のランクも明確に記されているので、内容だけで決めるのは馬鹿。

 それに一度申請が受理された依頼は辞めることはできない。

 それは、琵琶鼓城の信用問題に直結してくる為である。


 俺が個人でやるにも全然弱いだろうしチームを組みたい……けど報酬減るよな。

 でも、仲間は欲しいし……。


 馬車での輸送護衛、迷宮ダンジョン調査、札色が緑以上ってのが少し多いな。

 んで、もう少し上の方を見れば札色こそ指定されていないが難易度がやばいのもある。


 指名手配の賞金首類だと首切り殺人鬼オッドー、人攫いのザナク、臓器売人、少し下に目を通せば幽霊列車の調査などがある。


 幽霊ってだけでも、もう関わりたくない。

 ほんと、緩いものからエグいものまで幅広い。


 おー、丁度いいのがあったな。


「ゴブリンの巣……」


 早速受付へと依頼書を渡し、判子が押される。

 札にはそれぞれ登録番号が明記されており依頼を受けた琵琶鼓人の登録、依頼主の報告などなど、人一人が依頼を受けるにも受付嬢は仕事が増えるそうだ。

 胸の大きなお姉さんは露骨な溜息をついていた……大きい。


 大門をぬけ、購入した地図を見る。


「初めての依頼かー」


 なんか新鮮というか、ウキウキする……!! 

 場所はここから少し離れた厭春えんしゅんと呼ばれる区。

 俺の今いる行政区は壟雲逢簑ろううんほうさ……言いにく。


 ……んで、どうにも少し遠い。

 間に海が挟まれており、列車を通して目的地に着かなければならない。

 えーと、うん。もう少し慎重に依頼を吟味しておけばよかったな。

 俺が馬鹿でした、はい。


 目次からページを開く。


「あった。九〇分くらいで到着か……」


 依頼時間までは大丈夫。

 今からその列車というのに乗れば問題なしだろう。

 けど、ちょっと周りの人に色々教えてもらわないと辿り着け無さそう……。


「少年。なーにか、困ってるっぽいね」


 後ろから急に肩へと手を伸ばし、ぐったりと体重を押し寄せてくる。

 声や背中に当たる胸の感触から、女性というのは直ぐに分かった。

 気のせいかと思ったが、視線は感じていたし。

 絡んでくるのか……。

 

「依頼受けて厭春って場所に行きたい、ここから行くのに列車の乗り方分っかんなくて。へへっ」


 ふむふむ、と少女は頷き楽しそうに笑みする。

 まるで刀華をおもちゃの様に、しかし、どこか人を喰った表情がある。

 長髪に艶のある黒髪、金色こんじきの眼。

 小さな帽子には琵琶鼓人が持っている物とは違ったお札が付いている。

 少しカジュアルで独特な服装、腰から下へと降りるスリットされた布は、透き通る脚のラインを強調している。


 後ろの腰ベルトには疎放に妖刀がぶら下がっており、柄頭には琵琶鼓人の持つ札が掛けられている。

 色は緑、だがそこに王冠の様なマークが描かれている。

 普通とは違う札のようだ。


「じゃぁ私が案内してあげよう~」


 怪しい……。

 いきなり声を掛けて案内してくれる? 

 そんなうまい話が、というか自分から人の世話を焼きに来る人なんていない。

 俺でもそうだ。


「金はないぞ」


 結果、所感を溢した刀華に彼女は笑い出す。


「大丈夫!!」


 何が大丈夫なんだろ……。

 まぁ城和国については全然知らないし、話し相手にいいかもしれない。


「私、楽藍。一条楽藍いちじょうらくらん、気安く呼んでいいよ~。キミは?」


 ―――にひひ、と無邪気な笑みに彼女は少年と眼を合わせる。


「莽薙刀華だ」


「じゃ、とーかちゃん。よろしくッ。ささ、早く依頼書見せて」


 言われた通り、刀華は懐から依頼書を取り出す。

 内容は厭春区のとある村にゴブリンが襲ってきている。

 子供や女も連れ去られており、それらを生きていれば助け、死体なら村や琵琶鼓城に報告、ゴブリンはほぼ全滅させてほしい、とのこと。 

 かなり緊急っぽいけど、なんで依頼が低ランクなんだろ。

 特に強いレベルのゴブリンはいないと報告があるので、難易度も高くない。

 初心者の俺ならいけるだろうと踏んで申請したのだ。


「ふーん。じゃッ、私について来て~!!」


 駅へと向かっては、切符というものを買い列車に乗る。

 一つ一つ、刀華が訊かずとも楽藍は丁寧に説明をし、理解を深めていった。


 村にはなかった概念、乗り物『列車』。

 煙を立て、線路を進み厭春へと二人は向かった。

 人数はかなり少なく、小さな話し声が聞こえる。

 列車。空馬に引かれていた馬車と違い内装は広く、揺れの振動も僅か。

 けど、術を使っているだけあってスピードは空馬の方が超早い。

 空馬は線路の敷かれていない遠くの依頼で使われてるのだろう。


「はい、食べるっしょ」


 隣席にいる楽藍は脚を組みつつ、刀華へと一本の団子を渡す。 

 味はあんこ。一口食べれば濃厚な甘さが口内を支配してゆく。

 幸せそうな顔をする刀華に楽藍はくすッと笑みした。


「こっちは梅味」


 と、刀華の口へと団子を入れ、もぐもぐと食す。


「おお。すっぱいってより、変わった甘さ……?」


「そ!! そッ……!! これが超美味しいのォォ!!!!」


 甘い物が好きすぎる楽藍はひどく興奮し、団子を味わってゆく。

 にしても梅味は美味しい。

 ただの食いさしを入れられたけど、触感がモチモチしていて口の中で溶けそうだった。


「えーと、訊きたかったんだけど」


「ん? あーなんで声かけたのって顔してるね」


「……正解」


 楽藍は団子を購入した店の袋を刀華へと見せる。

 名は『パッション』、そういう名の団子屋専門店だ。

 袋から取り出したのは一切れの割引券。

 ハートマークや桃色が目がちかちかする程色彩されている。


「パッションにカップル割引ってあるんだよ~。それが明日ってわ~け~」


「カップル割引……」


 そんな割引あるのかよ。

 まぁ本人達からすれば嬉しいハッピーなんだろうけど。

 カップルか、男女交際とか考えたことねー。


「そう。私の彼氏のふり。あそこって本当に君達カップル? なんて動揺誘ってくるからさ。流石にちゅうまで強要するは無いけどさ~」


 そこまでして行きたい団子屋という事だろう。

 甘い物が好き、というより団子そのものが好きに見える。

 まだ一つ大きなパッションと明記された袋もあるし……。


「あ。この団子はあげないからねえ。どれだけ譲っても一本だから……!!」


 まるで猫の様にキリッと袋を守っている。

 でも、頑張れば一本はくれるらしい。挑戦はしないが。


「とりあえず、パートナーのふりだな。別にそれくらいいいぞ」


 てっきり金品を物色されるのかと思っていた。

 本気で思っていた。

 だって思いつく事なんてそのくらいだし、善意も善意で俺が危ない奴だったらどうしたんだとか色々気になる。


「でもなんで俺? 偶然?」


「うん偶然だけど……ほら~私可愛いじゃん」


 当然に呟くが、自惚れではなく客観視した他、告白された事は何度もある。

 純粋な事実として楽藍は如実しているのだ。

 笑っている刀華に、楽藍は頬を膨らませる。

 心の中で馬鹿にされたか、団子を食べつつ溜息をつく。


「ん~、いいじゃん事実なんだし」


「いや。そうじゃなくて、友人に似てるなって思っただけだ。自分の事は自分が一番分かってんだろうし、それが事実なら可愛いんじゃねーの。知らんけど」


「ほぉ……言うね~。もしや口説いてる?」


「んな訳あるか」


 ―――少し萌萌と似ている。

 何と言うか、周りの常識に流されない、悪く言えば自己中。

 だけど俺は我の強い自分を持っていると思っている。

 似ている、少しだけだが似ている。


「ほらほら。そこら辺の、んにょ~ってしょぼくれた人より、つらのいい人とカップルの方が怪しまれないでしょ~。ほら、どうよ」


「そうなんかねー」


 分っかんないな。

 興味はあるけど。


「俺は面いいのか?」


「うん~」

 

 間もなく純粋な言葉に、刀華の胸がぎゅと押さえつけられる。 

 動揺をからかう目付きで楽藍は冗談冗談と笑い飛ばした。

 小悪魔、この言葉が一番彼女にしっくりと馴染むだろう。

 先端にスペードの黒い尻尾が生えてても不思議じゃない。


「そりゃどうも」


 一瞬の間の中、刀華は照れを隠しつつ言葉を溢した。

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