第10話 これから、
勝意と心羅を見送り俺はその場で倒れ込んだ。
体中が血だらけで、貧血もあってか死ぬかと思った。
結界は全て消え、村の腐死も静かに永眠する事となる。
色々整理がつかないが、まず直接的な仇は取れた。
村では皆が死に絶えている。
探したが助かっている者は誰一人いなかった。
空の包囲結界は無くなり、今は夕方頃―――。
多分、超寝てた気がする。それに、まだ体中が痛い……。
血がべとべとだ。
一旦起き上がっては勝意の元へと足を運ぶ。
乾いた血で周囲が染められている。
昨晩泣きすぎて、気分が悪くもなったが、もう耐性みたいなのが付いてきた。
「仇は取るな、だよな。でもごめん、無理だ。俺が勝意の分まで……ジン・グリオノヴァールも殺すから、見待っていてくれ」
万画一臣、摂儺と二本の妖刀を刀腰ベルトにぶら下げる。
形見だ、肌身離さず大事にしておこう。
何をするか考えた結果、とりあえずはアプルに墓を作る事にした。
勝意や師匠もそうだが、死体はずっと放ってはおけない。
死臭というのでコバエもくるし、皆には綺麗に眠っていて欲しい。
幸いな事に、俺の術でそれは可能だ。
墓を建てるが死体がない者もいるだろう。
せめて、形だけでも土や石で墓を作ってゆく。
墓を作っては朝がやってきた。
忘れて、何かに取りつかれたかの様に没頭していた。
死体は俺の術で凍結させ、淡く結晶化し消滅してゆく。
墓を作りながら、少し考えていた。
まず俺は勝意の言っていた城和国に向かう。
本当は勝意や萌萌と一緒に魔族問題を片付けて行きたかった。
でも……結局独りぼっちになってしまった。
師匠が言っていた。
海を渡らず行くのなら半年はかかる。
まず海を凍結し足場に渡るのは妖気量的に不可能。
となれば、半年歩いて城和国に向かう事になる。
場所は北、だったか……。
歩いていれば、目的地につくと思いたいが。
食糧は狩猟がメインになってくるな。
水は川があるとこで野宿すればいいとして、風呂も川がある。
着替えも川があれば洗えるし、着替えを二着布袋に詰めていけば問題なし。
すげぇ、水って偉大だ……。
あと、使えるか分からないが村の金だな。
大量にあるし、ここにあっても誰も使わないし使えない。
俺が持って行っても文句は言わないと思う。
目指すは、城和国。
城和国、そこで衣食住を確保しつつ、働き、もっと強くなる。
殺す敵は俺の中では明確としている。
ラハードがいっていた魔王、『神核者』ギリウス。
そいつを殺す為に、皆の仇をとる為に俺は魔王を殺す人間になる。
そして勝意の仇であるジンという魔族、そいつも殺す。
§ §
荒野を歩き、森を歩き、城和国を目指して一日が経過した。
ゴールは分からない、方角頼りだがそれも不安な中とりあえずは一息をつく。
―――深夜。
一様持って来たマッチ箱3セット。
摩擦で火をおこすのは、萌萌はよくやってたが俺とか勝意は無理だった。
木から選んで、糸を通してはひたすら擦るというが全然コツが掴めなかったのは良い思い出。
小さな火を起こし、仰向けになる。
火だけでは肌寒いので薄布を掛けては寝ることにした。
妖魔が来ない様に気を張り、いつでも戦えるように刀を装しておく。
今は訪れたことのないジャングルみたいな所にいる。
マジで、夜と昼との温度差が激しすぎるので体調管理に気を使ってしまう。
夜は寒く、昼は暑過ぎるのだ。
「寒ぃなー」
―――まぁ、とりあえずは暮らせる。
城和国までまだまだ遠いし、進む道は森を抜ければ殆ど荒野。
明日のゴールは山になりそうだ。
かなり遠いが目に見える巨大な山……。
あそこに村の一つでもあれば休めるんだけどなー。
それはそうと、動ける範囲で万画一臣を扱い低級の妖魔や魔物をよく試合感覚で殺していた。
剣術の腕も鈍らないよう、意識もした。
勝意や萌萌、師匠に馬鹿にされない様修行は持続しないといけない。
勝意の妖刀は呪より想像力が働く限りの武具兵器へと変換できる。
俺が使っていたのは大鎌デスサイズ、理由は何となく最初に思いついたのがそれだったから。
背中から軸に遠心力を描き扱うが、ちょっとしんどかった。
重さや形と色々拘っても、使いずらい。
まぁ今日は全体的に体もメンタルも疲労しているし、割り切るか。
明日は一日中歩いて、体を休める事に専念しよう。
気がかりなのは、阿修羅が封印されたという妖刀・天下無双七英神将『摂儺』。
これの性能が全然分からん。
俺からすればただの刀を使ってる気しかならなかった。
けど、不思議と気に入ってるんだよなー。
デザインもそうだけど、なんつーか表現が難しいが戦いが楽しくなる。
師匠は、この妖刀をどうやって使いこなしてんだろ……。
まず剣術を極めまくって、その次に勝意が辿りつけなかった新ステージ、術の奥義『深淵開放』だな。
魔王ギリウス、どんな奴なんだろう。
三闘鬼人の言っていた平和って、村一つを滅してまで必要だったのか。
そもそも平和とは何なのか……。
ジンという魔族も殺さないといけない。
勝意が殺せなかった、俺が勝意の分まで頑張らなければならない。
やる事はいっぱいだが、全ての物語に順序は決めている。
流石に眠いな。
そろそろ、明日に備えて寝る―――。
§ §
ふと目を覚ませば、見たことのない世界が辺りに染まっていた。
匂いから何まで、しかし無音。
静かすぎる、ここはどこなのか……アプルがふと記憶から引き出される。
―――周りは絶景だった。
野原に突っ立っている俺からは、梅や桜、よく名前の分からないたくさんの樹木に川、雲などなど。
それが太陽が無いというのに、ポカポカとし風も美味しい……幻想的な空間だ。
まるで四季が一つにまとまった様な……。
「……主だなぁ? 面白そうな奴が来たものだ」
何もない空間から声が聞こえた。
冷たく面妖に脳へと響いてくる女の声だ。
……夢? なにかの悪夢か?
「―――して、誰だ? 仙人―――? それとも、魔王? もしや、賢者か」
後ろへ振り向く、声の方へと視野に収めれば一人の女性がいた。
「主は―――誰だ?」
俺へと強く視線を向けてくる。
だが、どこか気分良さげに黄昏ているようにも見える。
「……だれって。気づけばここにいたんだ。俺の夢じゃねんなら説明してくれ。というか、お前が誰だよ」
目を細め刀華は容姿を強く睨む。
角が二本……竜……?
いや、明らかに鬼だと思う。
萌萌から色々教えてもらい知識は増えたが、多分幻妖族って奴か……。
幻妖族と魔族にも属によってはそれぞれ同名の種族がいる。
竜と龍とか、鬼もその例に入る。
ラハード・ファトゥルフがそうだったように。
種族が鬼である場合、幻妖族か魔族かは角の色や形で何となく分かる。
妖気も感じれば確定。
深紅の長髪に、薄く開いた目は金色をしている。
和装、所々には貴族が持っていそうな金の装飾品をつけていた。
身体にも所々に、金色の紋様が描かれている。
地味そうに見えて、密度の濃い変な派手さがあるのだ。
美しい、という言葉もあるが印象としては品のある不気味さを放っている。
独特に、俺という人間を伺っているのが見て分かる。
浮世離れし、きょとんと虚無を見つめているかのような瞳。
「はァ、だるい。おい主よ、余をここから出してくれぬかー?」
一様に、俺は妖気を纏わせ警戒する。
僅かな視線、威圧を感じたからだ。
俺の警戒態勢に、相手は見下ろした。
瞬きをすれば、ふと俺のそばへと迫る。
不気味、この一言が物語っている。
なんだ、こいつ?
瞬きの刹那に……速いとかそういうレベルの話じゃないぞ。
「男だったか。なら、仙人ではなく現代の魔王か? 席居は? 第五席居からは魔王でも別格と耳にした事がある―――」
「お前は誰だ……?」
俺の警戒した疑問に、相手は不思議そうに伺っては自己紹介をする。
「余の名は阿修羅、この世の『頂点』に至る者だ」




