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初めての職場 -オラ駐在-

駅前を少し歩くと、遺跡都市の王ソーマの像が見えた。かつては鉱石の採掘で栄えていた、ようなことが像の下にある石碑に刻まれていたが、すでにこの景色のように枯れたウチの心を揺さぶることはなかった。


事前に商会から受け取った案内状をカバンから取り出す。

 ~駅を出たら東の方へ、坂を少し下って左の小道へ~

 ~13時、事務所内の商会員にお声がけください~


左手の時計に目を落とす。

まもなく商会から指定のあった13時になろうとしていた。


(いま急いで街を見ることもないかな)


ソーマ像は西寄りに位置していたため、フレアは一度来た道を戻り

改めて東へ向かう道を歩き始めた。


初めての道を歩くのはあまり自信がなかったが、存外すぐにそれらしい道は見つかった。


「坂を下って左の小道…あ、ここかな」


曲がった小道を少し歩くと、3階建ての白い建物が姿をあらわした。

そのまま進むと小道沿いに出入口があり、扉の横には看板が取り付けてあるのが見えた。



【カノン商会所属 魔力列車管理事務所 オラ駐在】



扉に手をかける。カギはかかっていないようだ。


中に入ると目の前には階段が見える。右手には何やら扉の開いた部屋があるが人の気配はない。

恐る恐る進んで中を覗くと、工具や雨用ジャケットが干してあるのが見えた。

どうやら1階は倉庫らしい。


(え…上にあがってもいいのかな…)

案内状をもう一度カバンから取り出して読んだが、階数までは書いてないようだ。


足音を立てないようにゆっくりと階段をあがっていく。


2階。人の気配がする。


階段をあがりきって左手、大きそうな部屋が見えた。

人の話し声も聞こえる。


また恐る恐る部屋の中に数歩足を踏み入れる。

中に入ると受付のようなカウンターがあった。


部屋の中では作業服を着た男性数名が机の上でなにやら書き物をしたり、互いの席で会話をしていた。

会話をしていたうちの一人が人の気配を感じたのか、受付に視線を移しフレアの存在に気づいた。


(あ、チャンス)

フレアはその男に声をかけようと喉に力を入れた瞬間。


「おぉーー!!もしかしてアンソルさん!!?」

男は受付の前にいたフレアにもよく届く、というより部屋中に響き渡る大きな声で先手を取った。


ちなみにフレア・アンソル。ウチのフルネームだ。


まさかの声量に面食らったがすぐに立て直す。

「は、はい!フレア・アンソルです!あ、あのこれからよろ…」

「所長!しょちょーう!アンソルさん来ましたよー!!!!」


が、男はお構いなしにさっきよりも大きな声でフレアの声をかき消しながら誰かを呼んだ。


受付から少し入って左手にある個室から席を立つ音が聞こえる。


「うるせぇんだよイーデン!もうちょっと小さくしゃべれバカヤローが!」


突然の呼びかけに不機嫌そうな反応を示しながら男が大部屋に顔を出した。


白髪交じりの黒髪に浅黒い肌で、指に火のついていないタバコを持っているのが見えた。

歳は50代くらいだろうか。妙に力を感じる目がこちらを見た。


「おう!いらっしゃい!こっち来てくれ!」

不機嫌そうな声は一瞬で消え、代わりに少し形式ばった声色で手招きしながら個室へ入るよう促された。受付を通り抜け個室へ向かう。


「今日からよろしくねー!」

イーデンと呼ばれていた男がフレアにまた声をかけた。

短髪の黒髪をオールバックにし、フチなしのメガネをかけたその顔はニコニコとこちらを見ていた。


「ありがとうございます!よろしくお願いします!」

つられて少し声量があがる。


「失礼します!」

個室に入るとき、横目で見た扉に「所長室」と書いてあるのが目に入った。

中に入るとこの個室の主の机があり、その机を挟んで椅子がもう一脚置いてあった。


「そこ座っててくれ。あと悪ぃちょっと1本吸わせて。」


「あ…はい…。」


あれ?置いてかれるの?と考えた瞬間、声量は元に戻った。

男はいそいそと早歩きで部屋を出ていった。


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