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十三歳になると私の体型は少しかわり、痩せすぎから痩せている……ぐらいにはなれたと思いたいが、まだまだ痩せすぎから抜け出せてはいない。
服装は子ども服からいくぶん大人っぽくなったが、質は良いが令嬢にしてはかなりシンプルな服が多かった。
相変わらず一人で食事をし、食堂と自室の行き来しか許されていないが家庭教師は一人増えて二人になり、週二だった授業が今は週三である。
新しい家庭教師も鞭を使うことなく授業をするのでホッとしていた。
更に、二人の先生は今もとても熱心に教えてくれるが、先生の一人はたまになら……と雑談もしてくれるようになった。
「セナ様は魔法に興味がおありのようですね」
「魔法が使えると便利ですよね。先生は使えますか?」
「私は一通りできますが、魔力量が少ないので……。セナ様は十三歳ですから、今年、魔力量の測定がありますね」
ラッセン王国では十三になる歳に魔力検査が行われるが、公爵家は測定に行くではなく、うちに役人が来てくれることになっている。
「はい。明日測定があるそうです」
「セナ様からは普段魔力を感じないので、おそらく魔力量は多くはないかもしれませんね」
「魔法は使ってみたいですが……私には難しそうですね」
「魔力量が少しでもあれば使えるようになりますよ。そのときは私が基礎をお教えしますね」
「よろしくお願いいたします」
私にはなんとなくだけど、適性はなさそうだ。でも少しでも魔力があるなら使ってみたいなと思うのは、魔法のない国からきたが故にやはり憧れがあるからだろう。
緊張していたけれど、明日が楽しみになってきた。
◇
「セナ、ブレスレットはしているか?」
「はい」
父に腕を見せると、絶対に外さないように言われた。
今日はいよいよ魔力量の測定の日だ。先ほど測定器具を持った国の役人がうちに来て、私の部屋で準備をしていた。
「テイラー公爵殿、準備が終わりました。ご息女様の測定をはじめてもよろしいですか?」
「うん、頼むよ。セナ、そちらに座りなさい」
「はい」
私は言われた通りに椅子に座り、役人の一人に指示をされ、水晶玉のように透明な玉に手を置いた。
「D……ですね。はい、もういいですよ。ありがとうございました」
「セナ、こちらに来なさい」
私は水晶玉から手を離して父の側に戻った。
「公爵殿、ご息女様はDでございました。質問等がなければこれにて終了させていただきますが何かございますか?」
「いや、なにもないよ。ありがとう」
「では、こちらが細かい測定表になります。私たちはこれで失礼致します」
役人の一人と父が話をしている間に他の役人が片付けをすませ、終了と共に帰っていった。
「セナ、今日はもう休みなさい」
「はい」
そう言うと父は測定表を持って部屋を出ていった。
D……。
確か先生は魔力量はAからEまであり、Aが多く、Eが少ない。それに魔力量は少なくても魔法は使えるようになると言っていた。適性は父が測定表を持っていってしまったので分からない。
とりあえず、ゲームの内容から出来の良くない妹、途中退場する妹、というのは決定しているようなので、できるだけ基礎の魔法を覚えていつかのために備えるしかない。そう密かに考えていた。
だが困ったことになった。
それは魔力測定の三日後のことだった。
今まで私の部屋で授業をしていたが、先生曰く、私の部屋は魔法を発動させない何かが施されているらしい。そのため魔法に関する授業は実際にはできず、先生が父に練習場所の提供をお願いしたところ「セナに魔法の訓練は必要ない」と取りつく島もなく断られたらしい。私からもお願いしてみたが同じだった。
「セナ様、残念ですが魔法の訓練は諦めてください。そのかわり、発動の仕方については知ってるものはすべてお教えしますね。いつか実践ができる日がくるかもしれませんからね」
「いいのですか?」
「訓練は必要ないとは言われましたが、やり方の指導まではダメだとは言われてないですからね」
!!
「ありがとうございます!」
それからというもの、二年間、魔法に関しては訓練をしないまま魔法の知識だけを少しずつ増やしていった。
◇
努力とさくらの知識でカバーをしつつ、学園で習う内容がだいたい習得できた十六歳になる数日前、とうとうあの日がきてしまった。