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38 ルカ side


「ルカ様、動きがありました」


 私は影と共に騎士団を連れて商隊に毒を混入した黒幕の一部を追った。黒幕はあちこち移動しているようで、見張らせていた影と合流できたのは連絡があってから二週間ほど経っていた。


 パラビッドの国境付近には犯罪者が労働する採石場がある。その監督をするキュリアス家によると、そこから離れてはいるがいつの間にか森の中に建物ができていたと確か少し前に報告が上がっていた。


「どうやらあそこらしいね」


 影に中を探らせると、誘拐されてきたのか女性が何人も倒れていると報告があった。


「調査を待ってられないな。よし、踏み込もう」


 騎士団と共に踏み込むと、ひどい有り様だった。女性たちは息絶えており、どの女性も見るも無惨なほど痩せ細っていた。


「いました!」


 奥の部屋に行くと地下に繋がる隠し通路があり、その階段を降りたところに男が数人捕らえられ、女性が一人横たわっていた。


 女性はかなり痩せ細っていたが、微かに息があったので、急いで上着を掛けてやり抱いて外に出た。待機していた医療班に治療を頼むため待機所に向かっている途中、女性は急に暴れだした。


「やっ……やめっ……」


 暴れだしたが、痩せ細ったこの体格ではたいした力もなく「もう大丈夫だ。お前は私が守る」と三回ほど声を掛けてようやく大人しくなり気を失った。


 女性はよく見るとあちこちに切り傷や擦り傷、さらに顔には殴られた跡もあった。


「医療班、この子をみてやってくれ!」


 先導していた騎士が声を掛けると、最年長であり、一番頼りになる医療班の班長、オルセーがテントから出てきた。


「ルカ様こちらへ」


 オルセーはテントに招き入れるとシートが敷いてある場所に寝かせるように言い、私はゆっくりと女性を下ろした。


 オルセーは診察をし、丁寧に回復魔法を掛け治療していった。私はまだ指揮があるので、オルセーに女性を預けて現場に戻った。



 城に戻って三日後、私は医療班を訪ねた。


「失礼するよ。オルセーいるかい?」


「ルカ様、こちらです」


 オルセーは奥の個室から顔を出し、手招きをしている。


「被害者の様子はどう? ん? なんだか印象が違う?」


「あぁ、魔法で髪色が変えられてました」


「そう。容態は?」


「ルカ様、女性ですがまだ一度も目覚めてません。怪我は完全に治しましたが栄養失調です。

 はっきり言いましてかなりの暴行を受けていました。肋骨二本、大腿骨、手首の骨折に、内臓も少々。そして足の腱を切られておりましたので歩けないようにされていたようです」


「目覚めるかどうかは?」


「目覚めるとは思いますが、かなりの確率でショック状態になるかと……」


「そうか……」


「……意識の操作をされますか?」


「そうだな。暴行の記憶は消してやってくれ。その後は私の部屋へ連れていく」


「分かりました。この女性、かなりの魔力持ちです。魔力を封じる枷を外さないようにしてください。そして、毎日診察をさせてください」


「分かった」


 オルセーが女性に魔法を掛け終わると、私は女性を抱え自室まで転移した。私の部屋は二つあり、一つは寝るためだけのもの、もう一つは書斎になったものだ。私の寝室は自身以外は基本的に入れない。城の最上部にあり、ドアもなく、窓は天井高くに一つあるだけだ。


 ゆっくりと自室のベッドに女性を寝かせると、私も寝る準備をし、女性の隣で横になった。


「あなたの名前はなんていうのかな?」


 意識のない女性からはもちろん返事はない。私は女性のさらさらな金色の髪を掴みキスをした。


「早く瞳を見せて……」


 疲れていた私は眠っている女性を抱くようにして眠りについた。



 ◇



 朝になり起きるも女性からは反応なく、体温とゆっくりとした呼吸から生きていることが分かるだけだった。


「さて、診察に連れていくか」


 私は身なりを整え、女性を抱いて医療班に転移した。


「ルカ様、おはようございます」


「オルセー、おはよう。今時間はあるかい?」


「はい。診察をさせていただきますね。こちらへどうぞ」


「昨夜も目覚めることはなかったよ」


「分かりました」


 私はベッドに女性をゆっくりと下ろし、しばらく診察の様子を眺めていた。



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