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37 ルカ side

 

「兄上、何かあったのですか?」


「呼び出してすまないね。緊急の事案があってね」


 そう言いながら兄上は足を組んだ。兄上は国王らしくするため、最近は髭を伸ばし始めたらしいがあまり似合っていない。


「ビースト公爵の話を聞いてほしくてね。ビースト、先程の話をルカにも聞かせてくれ」


「承知しました。ルカ様、少し長くなりますがお聞きください」


 ビースト公爵は私たち兄弟とは幼馴染みで、特に兄とは同学年で仲がいい。今は諸見の部屋ということもあり、このような言葉使いだが、普段はもっとざっくばらんに話す仲だ。


 そのビースト公爵の話によると、つい先日、隣国に行かせた商隊が毒により全滅しかけた。商隊は普段から食事に気を付けているので自分たちが食べる食材はすべて持ち込んでいた。すぐにおかしいと思い毒を混入されたことを視野に入れ、独自に調査をしたところ、間者が紛れていた。

 その者をなんとか捕らえ、聞き出した話は、


『自分の雇い主はビースト公爵家の商隊に商談に向かわせたくないものの一味である。雇い主の上の者は誰なのか知らない。


 自分以外には致死量になる毒を、自分は雇い主から別に渡された毒に見せかけた安全な薬を飲むように指示されその通りに動いた。

 ところが、毒ではないと聞かされていた薬は実は毒だったようで皆と同じように苦しむこととなった。服用した量が規定よりかなり少なかったことで激しい嘔吐をしただけで済んだが、その後は逃げることもできずぐったりしていた。


 そして、気がついたら毒の治療をされ、おぼろげだが、一人の女性が皆を治癒していた。


 こうなってしまったので雇い主を庇うのはバカらしく思い白状した』


 ビースト公爵は裏を取った後、隣国の友人に頼み、商隊を助けてくれたお礼がしたいという名目で女性を探してもらったが、近くで山菜採りの男女がいたということしか浮上しなかったらしい。


「犯人の一味はともかく……ルカ、聖女かもしれないね」


「そうかもしれません。ちょうど来週からユークリッドの王子が視察に来ますよ」


「探りを入れてみるか……」


「そうですね」


「ビースト公爵、この件はしばらくルカに預けてくれ」


「承知しました」


 ユークリッドの王子には私が付きっきりで対応した。晩餐会で兄上が商隊の話をしても特に反応はなく、それが演技にも見えなかった。


『ルカ様、王子の近衛の一人が内密に話したいことがあると、王子から申し入れがありました』


 側近の一人が私に念話を飛ばしてきたのはユークリッドの王子が来て三日経ってからのことだった。


『ということは王子の意向、ユークリッドの意向ということか……。いいよ。話を聞こう。今晩にでも会おうと伝えてくれ』


『承知しました』


 聖女の話だろうかと身構えて会ってみると、パラビッドとユークリッドの一部の貴族が癒着をしユークリッドで悪事を働いているという話であった。

 友好国であるユークリッドになんてことをするんだという思いと、一部の貴族が本当にそのようなことをという思いからこちらでも調べることを約束した。


 しかし、こちらの調査よりもユークリッドの近衛は優秀らしく二週間ほどで当たりをつけてきた。

 後は国内での調査をし精査をしなければというときに、ビースト公爵からビースト公爵家の商隊を襲わせた黒幕の一部が逃げ出したことを聞いた。そちらは影に追わせ、対応を後回しにした。


「ルカ様、黒幕の一部がユークリッドの方に逃げたようです」


「逃がさないようにと伝えてくれ。ただし、まだ手出し不要。犯罪が確定したら即刻捕まえると」


「承知しました」


 私は影に指示をした後、一部の貴族の件の調査を進めた。私の側近の一人が悪事の一端を見つけてから芋づる式に明らかになるまで約一ヶ月。後は騎士団に引き継いだ。

 寝る間も惜しんで働いた私たちは、ユークリッドの近衛も交えてお疲れ様の意味を込めて飲み会をした。


「ルカ様、この度は我々ユークリッドの申し出を信じて下さり、また、調査を率先して行ってくださったことに感謝申し上げます」


「ホーク殿、飲み会の席でそう畏まらずに」


 ホーク殿はユークリッドの辺境を任されているホーク侯爵家の次男だ。恐ろしく優秀らしくほとんど一人で調査をし、きっかけや取っ掛かりを提示してくれた。中には今回とは別件の犯罪まで指摘し、パラビッド国内での犯罪は格段に減った。


「こちらこそ、ホーク殿にはずいぶんと世話になったな。ありがとう」


「いえ、私はたいして」


 ホーク殿は調査をしているときは近寄りがたいくらいのオーラがあったが、こうして見るとかなりいい青年だ。


「ホーク殿はご結婚は?」


「いえ、まだです。そういうルカ様も……ですよね」


「まぁね」


 聞けばホーク殿はこの件が片付いたらお近づきになりたい女性がいるらしく、酔うとポツリポツリと話してくれた。その姿を微笑ましく見ていると、ユークリッドの他の近衛にもその話は有名らしく、皆楽しそうに会話していた。



 ホーク殿たちユークリッドの近衛が引き上げてしばらくしてから見張らせていた影から連絡があった。



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