28 ルーゼント side
私は運命の出会いを経験したことがある。
私はホーク侯爵家の次男として生まれ、幼い頃から文武両道で育てられてきた。辺境の地に住むものとして武道ができるのは当たり前という状況で、私は魔力を使うことも得意だった。兄弟は四人。下に弟が二人の男ばかりだ。友人は少ないが特に気にならなかった。
ある日、私は父に呼ばれ告げられた。
「ルーよ。王を守ってくれないか?」
ユークリッド国の王は父の親友だ。身分は違えど、杯を交わすほどであり、互いによく連絡を取り合っていた。
なぜ私が行くのか……それは私に特殊能力があったからだ。私は人に触れたり魔力に触れると香りを感じ、だいたいの人となりが分かる。だが、それがなぜだかは分からない。そしてこの特殊能力は家族とユークリッド国王にしか明かしていない。
「最近、不穏なことがあるらしいが、犯人を突き止められないようだ。ルー、行ってくれるか?」
「もちろんです」
私は王都に着くなり、王に諸見すると第四騎士団に配属された。騎士団で働きながら、中央で怪しいと思うものたちを秘密裏に王へ伝えるという仕事を請け負い、伝える度にすぐに精査され対象者は処分されていった。
「ルーゼントはさすがだな。早々に一掃できたようだ」
「ありがたきお言葉にございます」
「これからも力を貸してほしい」
その一言で騎士団に残ることが決まった。
その後第四は魔法に特化した団ということもあり、隣国のラッセン王国からの要請で転移についての共同研究をすることになった。その際、私が二月ほどラッセン王国に行くことになった。
ラッセン王国の窓口は第一王子であったが、実際にはギルバート・テイラーとという人物との研究であった。ギルバートの魔力は素晴らしく、今までに嗅いだことのないいい香りがした。人となりも香りの通りすばらしく、家族以外で惹かれたのは初めてだった。
「ルーゼントは僕以外とは話さないの?」
「ご迷惑ですか?」
「いや。もったいないかなと思ったからだよ」
「そうですか?」
「君は真面目で誠実だ。話してみて発見できることもあるさ」
「そうですかね……」
ギルバートは私にこう言うものの、無理強いすることはなかった。
二月ほどで終わる予定が、自国の騎士団に召集され一月足らずで帰ることとなった。その頃にはギルバートとずいぶん話すようになっていたため、帰国は残念であったが、内容が内容だけに命令に背くこともできなかった。
「ギルバート様、あと少しというところで帰国となり申し訳ありません。完成したらラッセンとユークリッドを繋ぐこともできたでしょう。そのときを楽しみにしています」
「そうだね。いつの日か完成するといいな。今までありがとう。次は仕事でなく遊びにおいで」
「はい。ぜひ!」
「ほら、早く出発して!」
私は完成を見ることなく帰国の途に着いた。
馬を飛ばして帰国をすると、距離があるためタイムラグがあり、すでに国内は落ち着いていた。
「ルーゼント、任の途中で呼び寄せてしまってすまない。今は落ち着いたが、だいぶやられた」
魔物が群れで大挙して襲ってくるスタンピードが起こったと報告があり帰国したのだ。
「団長、聞いております。被害も相当だったと」
「なんとか押さえたが団はボロボロだ」
「次に備え建て直しましょう」
それからはかなり忙しくなった。治癒師により順番に治されはしたものの団員はしばらく足りず、勤務時間も大幅に増えていた。しかしそれは一時的で半年ほどで徐々に落ち着いていった。それから数年が経つがスタンピードは起こらず、たまに魔物がきても騎士団で対処できる程度だった。
そして私は運命の出会いをした。
自領への帰省から戻る途中、微かに魔力の香りがした。それは懐かしい香りによく似ていて馬に乗っているのも忘れて香りの先を探してしまった。
しまった! と思ったときには遅かった。落馬し怪我をしてしまったのだ。正直、こんなことは初めてだった。足は外に向いてしまい、鎖骨と肋骨もやってしまったようだ。
「これからどうするか……」
その数分後
「大丈夫……ですか?」
女性二人が近づいて来て私に話しかけた。
「ああ、よかった! 実は足を怪我したので動けなくて……。助けを呼んでもらえませんか?」
自分では帰ることもできなさそうだったのでそう頼むと、女性の一人が治癒を掛けてくれた。
あ、この香りは……。
!!
ルーさんside、次話に続きます。
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