プロローグ
「セナ様、あなたはこの国の伯爵位もまだ覚えられないのですか?」
「……すみません」
「あなたは公爵令嬢なのですよ? これぐらいすぐに覚えてくださいよ」
「……すみません」
「返事も聞こえるか聞こえないかの小さな声で! お母様の命を奪ってまで、全くどうしてあなたなんかが公爵令嬢なんでしょうね」
「……すみま、せん」
今日も家庭教師が来ている時間はすべて叱られる時間だ。いつものことだけれど、体調が悪いときは特につらい。
私はこの日、朝目覚めたときは大丈夫だった体調が、だんだんと具合が悪くなり、家庭教師がきているというのに意識がどうにもこうにも保てない。朦朧としてくるのを必死で押さえながら伯爵位の人物を覚えていた。
家庭教師が来ているときだけは絶対に具合を悪くしてはいけないから気を付けていたのに。
「ギルバート様やエリサ様はよくお出来になるのに、どうしてセナ様は同じようにお教えしてもお出来にならないんでしょうねぇ? お母様のお命を奪ったのですから、これぐらいすぐに覚えてください」
この言葉も何回目だろうか。今まで数えきれないほど言われた言葉だ。家庭教師が言うには、こんなに落ちこぼれた生徒は初めてだと。
そしてこの後はいつも通り鞭で背中を打たれるのだ。
私は少しだけ身構えると、いつもよりも強く打たれてふらついた。
あっ! と思ったときには隣にあったチェストに倒れ込み頭を打ち付けていた。ドロリと流れるものを感じながら私の意識は暗転していった。
私、死ぬのかな……?
このまま死んだ方が楽かも……?
そこから私は長い時間夢を見ることとなった。
「公爵家から追い出せ!」
「しかし!……」
「あんな恥知らずとは……」
うっすらとそんな声が聞こえた気がした。
読んで頂きありがとうございます。
プロローグのみ文字数少な目ですが、
次話以降は2000文字前後になるかと思います。
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