4話 幕末あたりまで話してみた
饅頭、羊羹、カステラ、金平糖…コアトリクエの記憶にあった信長が好んでいた菓子が並ぶ。
信長はと言えば横になって菓子を摘みながら茶をすすっている。
「だらけすぎじゃないです?」
「気にするでない。疲れた時は疲れたなりの体勢でいる方が頭は働く。話を続けよ。」
「じゃあまぁ話しますよーっと。まず本能寺での一件の後からですね。信長さんを討ったことになった明智光秀は羽柴秀吉に討ち取られて、そのまま秀吉が織田家乗っ取って天下統一します。」
信長は饅頭を頬張りながら笑みを浮かべ言う。
「ほぅ。猿が天下を寝取りおったか。彼奴め毛利と和睦交渉勝手に進めておったな。とすると…光秀唆してわしを討ったのは猿か?」
「それはどうですかねー。私はその答えは言いませんよ。」
「まぁ良い。わしも心当たりはいくらでもあるからのぅ。ひとまず続けよ。」
「さすが謀反慣れしてらっしゃる!」
「…おい。」
コアトリクエはしたり顔で返す。
「はいはい続きですね!」
「まぁ猿が天下取ったあとは想像はつくがな。猿が天下取っても一代じゃ。また荒れたんじゃろ?」
「ですね。本能寺から8年で天下統一、そこから8年で秀吉さんが死去。その2年後に徳川家康と石田、毛利が大戦やって徳川が勝って幕府開きました。その15年後に羽柴家を滅ぼしてます。」
「石田って…猿の小姓の石佐か?」
「はい。家康の羽柴家切り崩しを止めようとしたんですけど、さすがに戦いの場では役者が違いましたね。」
「にしても竹千代も…やりおったか。しかも幕府を開いたとなると…いや結局変わらぬ世になってしまったみたいじゃな。」
思案顔のまま茶を啜り信長は一つ息を吐いた。
「260年ほど徳川幕府が続きます。主な政策としては鎖国による対外排除、一国一城、参勤交代等による大名の経済、戦力削り。朝廷も法度で縛りました。農村に関してはそこまで変わってはないですね。」
「あー…徳川家のみの発展で安定を図るか。やらかしてるのぅ。鎖国とはどんなじゃ?」
「キリスト教…耶蘇教のほうが伝わりますかね?その排斥を念頭に、長崎…肥前に作った出島という場所のみでなおかつオランダと明、朝鮮以外の国とは関係を持たないという政策ですね。」
顎髭に手をやりながら信長は思案する。
「…貿易も独占して対外文化も排斥。そうなると…力を保てたのは琉球貿易がある島津か。そのまま西国をまとめたとして島津、毛利、長宗我部あたりの連合で、縛られて不満たらたらの朝廷抱き込んで錦の御旗でももって幕府に戦仕掛けて同じような不満もってた各地の大名が蜂起して詰みじゃな。」
信長の発言にコアトリクエは目を見開く。
「何その戦術眼!?見てきたんですか!?ってレベルでばっちりなんですけど!!」
「それだけ自家優遇、他家、他文化、他権力排斥ってやったらどこぞで蜂起されて、それが波及しては見える。合わせてその環境下で力を保てるのは監視の目が届かない所で経済回せるやつじゃ。となれば島津は絶好の位置。あとはまぁ適当じゃ。」
コアトリクエは改めて信長という存在がどれ程までに規格外であったのかを感じながらも説明を続ける。
「長宗我部家だけ滅んでるのでそこ以外はほぼそのままです。付け加えるとしたらアメリカ、という国の海軍がやってきて開国要求。それに応じて幕府のブレを示してしまい口実になったってところです。」
「アメリカとはどの辺にあるんじゃ?」
「あーその辺りは地図出して後ほど説明します。尾張の海の向こう側と今は認識しておいてください。」
「ノビスパニアの近くか?まぁ話を続けるか。」
「じゃあ続けますね!信長さんの見立て通りで、対外政策のブレに付け込んで薩摩、長州が組んで天皇親政に戻すという建前で公家を抱き込んで勅許とって武力蜂起。倒幕は成功し、武士という身分も消滅。天皇の下、政府が世の中を動かして行くといった世の中になります。」
「実質大差はなさそうじゃのぅ。」
「まぁ一つ言えるのは年貢を税としていたものから貨幣経済、貨幣での納税への転換というのが大きなところです。」
ここで初めて信長は身体を起こして座り直した。
「ん?待て!その時点で300年は経ってるはずだが徳川はそこまで貨幣を流通させてなかったのか?」
信長の思案していた世の中は経済ありきだった。だからこそ貨幣経済を実現していなかったことは衝撃でしかなかった。
「んーやろうとはしてたみたいなんですが上手くいかなかったみたいですね。農民なんかは一揆やら逃散やら。」
「民も育てなかったか…。そんなんでよく300年近く持たせたものじゃ。」
「大名も民へも統制だけはしっかりしてましたからねー。で、倒幕後新しい政府体制になってから諸外国の手法取り入れてモノ作りして輸出したり、法を整えたり色々やってそこはかとなく発展はして行きました。」
「軍事面は?軍はあるんじゃろ?」
「各領主の私軍ではなく国の軍として陸軍、海軍という形で統帥権は政府ではなく名目上天皇にあって、実態は陸海軍大臣が握ってる感じでした。」
溜息と共に信長は呆れ顔で言い放つ。
「政治思惑と別の動きをする武力…か。そんなの謀反起こされて政治実権も掴まれて結局戦国の世じゃの。」
「それでも最初は上手く行くんですよ。明改め清と戦争して領地分捕って、当時世界最強なんて言われてたロシアの海軍叩いたりとか。」
「戦の結果はどこまで行っても戦が起こるまでに何をしたかじゃ。日の本は体制が変わって軍も一新、おそらくは倒幕の戦の将で出来るやつが率いて準備が出来ておるはず。それでいて日の本は世界からすれば閉ざしていた分新興国の扱いじゃろ?清やらロシアやらはある程度舐めてかかったか元から瓦解していたかじゃろう。」
「ほんと頭の中どうなってるんです?でもまぁその辺わからずに軍部は調子に乗っちゃうわけです。」
「勝戦しか知らん兵は1つ失策あらば崩れるからのぅ。」
「それが決定的になってしまったのが1度目の世界大戦で勝ち組に属しちゃったんですよ。て、そろそろ地図出しながら話進めますね。」
そう言うとコアトリクエは手を掲げて世界地図を2人の真ん中に映し出した。
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