3話 交渉のような脅迫まがいの何か
「ちょっと条件っていきなりなんですか!?」
「猫神、おぬしは神とやらで出来ぬこともそうないんじゃろ?それでいてわしの人間も見知っておるならわしがただ言う通りに従う輩でないのもわかっておろう?その上でわしが散るのを止めてまでやらせたいことがあるんじゃろ?しかも行先は400年先の世ときた。ならばわしが求めるものは貴様が用意するのも道理ではないか。」
信長は渾身のドヤ顔だ。
「あのー…これどう転んでも暴論で結論は全く動かないやつ…ですよね?」
「おう!何も変わらんから問答の時間が無駄ぞ。」
観念した、というよりも諦め顔のコアトリクエは
「ですよねー…。時間はどうでもいいんですが、疲れるのでさくさく進めましょうか。で、どんな条件なんです?」
「というよりもまずわしには情報が何もない。条件云々はそれからじゃ!始めに先の世で星がダメになる件。要は世界巻き込んでの大戦が起きたんじゃろ?つまりわしがせにゃいかんのはその大戦に至らぬよう諸々と潰して上手いことまとめてなんとなくいい感じにしとけってところか?」
「だいぶざぶっとしてますが方向性はそんな感じです!」
浅慮ととられたと感じた信長の顔が引きつる。
「…今までのおぬしとの会話でわかるのこんなもんじゃろうが!」
「あははー。まぁそうですよね。じゃあ色々な平行世界で試してきた結果の共通する部分をまとめますね!まずは…」
「待て!平行世界とはなんぞや?」
「そこはー…説明が難しいんですが、例えば今の状況でも信長さんが400年後に転生した世界としなかった世界とが生まれる可能性がありますよね?つまり…」
「よい!要点は理解した!」
話をぶった斬られたコアトリクエがボソッと
「…その辺ですよ。謀反されまくった理由…。」
と呟いた。当然他に何もない空間で聞こえないわけもなく
「なんか言ったか?」
信長も不機嫌そうな顔ではなく少しにやけたような表情で一言刺した。
その表情の意味を理解しているコアトリクエも
「いえいえー!じゃあ話の続きで、大戦の原因とかそんな感じの部分なんですけど、前提として全てそのまま起こる訳ではないっていうのは念頭に置いてください。」
と、さらっと話を続ける。
既存知識に捉われない信長も即座に意味を理解する。
「平行世界で起きたことはわしの行く世で起きるとは限らない…と。」
「その通りです。その中でも共通することが多かったことを伝えていくと、戦争が起きるのが人間が使っている暦で言うところの2025年〜2030年ごろ。信長さんの今が1582年なのでだいたい450年後に大戦が起きるはずです。理由もまぁ経済闘争の主権争いから自国主義の蔓延、仮想敵国への経済封鎖、それに耐えられず武力蜂起。あとはそのまま歯止めが効かずって流れがほとんどです。」
結局は金と暴力。信長の目線が少し遠くを見て口を開く。
「昔も新時代もやってることは対して変わらんのぅ。確認じゃが、わしは日の本の民として400年後に行くんじゃろ?」
「それで間違いないです。」
「ならばその経済の主権争いにおいて日の本は立場なんじゃ?」
「微妙な立場です。基本的には西側陣営についてるんですが、近隣がほぼ東側陣営で国中枢の政治家にも利権流れて中途半端な感じにいつもなってます。」
と、いきなり出てきただけでは理解の及ばない信長は
「いきなり西やら東やら出てきてもわからん!しかと説明せい!」
と一気に不機嫌モード。
「おっと!そうですよね。でもそうなると…うーん…ひとまず信長さんの後の400年を流れで説明していかないとですね。」
「…長そうじゃな。いい加減茶くらいだせ。」
炎の中で死を受け入れてから謎の状況に巻き込まれてで、さすがの信長も脳の疲労はピークに近かった。
「それは失念してました!お茶請けは?」
「甘いもの!」
コアトリクエは即答した信長を見て、どっちが童やら…なんて思いながら信長の時代のお茶とお茶請けがどんなだっけと記憶を辿り始めた。
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