2話 神の部屋
プロローグ的な部分です。もう少し続きます。
さすがの信長も事態が全く理解出来ずにいた。
死を受け入れ、滅びの味を噛み締めてやろう、そんな心持ちでいたのだから死んでいないであろうこの状況は理解が及ばない。
さらに言うのであれば焼けた木材に押しつぶされたはずなのに、その痛みもない。
混乱の中の信長。
それを察したかのように幼女が口を開く。
「やっぱり信長さんでもそうなっちゃいますよねー。とりあえず疑問に答えて話進めたいから気になったことはばんばん聞いてくれちゃっていいですよ!」
信長が混乱してることを面白がっているような口調と笑顔がシャクに触るが、状況の理解が先だと信長は判断。
「わしは死んでおらんのか?」
「あははっ!まずは生死の確認とかっ!やっぱり信長くらいになるとここはどこ?お前誰だ?とかやってくれないんですねー」
「ふざけるのも大概にせい!!切っ…!」
「はーい!その先の言葉は色々と面倒なんでストップー!結論から言っちゃうと生死の狭間ってやつが今の信長さんの状態です。時間的には止まっていて精神…いわゆる魂ってやつを私のところへ呼んだ、って感じで理解してくれれば問題ないです!」
「魂…?そんな糞坊主共がごちゃごちゃ言ってたようなことがわしに起こるとはのぅ。これも因果か…。童!つまりわしの状況は何も変わっておらず、おぬしがわしの死の瞬間を邪魔したということじゃな?」
信長はいつでも飛び掛かれる態勢で幼女を鋭い眼光で睨みつける。
「怒らない!殴ろうとしない!切ろうとしない!とりあえず話を全部聞いてからにしようね?確かに信長さんの生殺与奪は握ってしまってるんですが…はいはいはいはい!落ち着いて!そんな目を向けない!」
「簡潔にさくさく行きますよ!まず信長さんの状態は生死の狭間。私のお願いを聞いてくれたら生きますし、聞いてくれないなら元に戻って焼け死にます。炭化しちゃって誰かわからなくなるから目論見は成功しますよ!」
状況が少し進展し、信長の態勢は少し緩んだものの懐疑と憤怒の目は変わらない。
「…その目やめなさい!で、続いて私とこの空間ですが、私はこの星…地球と呼ばれてるんですが信長さんのタイミングだとまだ言葉がないかな?まぁいいや。信長さんのいた世界を創造、管理してるのが私です!つまりは神です!崇めなさい!」
そのふざけた一言に信長の身体から殺気が溢れる。
が、そこは幼女も一言、
「はい、調子に乗りました。謝りません。で続きでこの空間は私の空間。さっきから私を攻撃する気満々ですけど、私に危害加えようとしたらその瞬間に消滅しちゃうんでほんとやめて!そんな結末望んでないから!」
「でね、信長さんへのお願い。これは信長さんの自由意志で決めて欲しいことなんだけど、信長さんの時代からだいたい400年先の時代に転生してもらえませんか?」
「しっ…400年!?理解が追いつかん。詳しく説明せいっ!」
「あれ?ちょっと好奇心うずいちゃいました?」
「先の世には興味がある。」
信長は素直に答えた。いまだ理解は及ばないが、この状況や目の前の幼女への不審よりもまだ見ぬ世の中への興味が一瞬勝ったのだ。
「じゃあ説明続けますね!簡単に言うと400年ちょっと先の時代で人間が色々やっちゃって地球がダメになっちゃうんですよ。人間絶滅させてやり直してもいいんですけど、勿体ないからちょっと干渉して上手いこと出来ないかなって思って。それで信長さんがその時代にいてくれたらおもし…上手く行きそうだなって思ったのでこうしてお招きした次第です。はい。」
「…まぁよい。続けよ。地球がダメとはどいうことじゃ?」
「有り体にいうと星が死んでしまうんです。何も生まない、ただ爆発を待つだけの星になってしまうのが未来なんですよー。せっかく40何億年って色々やってきたのに。」
「その要因は?」
「人間の戦争です。色々な兵器が開発されていった訳なんですけど、地球規模でドンドンボコボコやって結果生物が生きていけない環境にしてくれるんでたまったもんじゃないですよ。」
「それはおぬしがなんかすれば良かったんじゃないのか?おぬしの話ぶりからして出来んことはなかったんじゃろ?」
「…色々とやりましたよ。それをやっても結局人間が地球を滅ぼすって結末が変わらなかったのでどれだけの平行世界で滅びを見てきたか…。まぁそれで最後の思い付きってやつです!」
「軽いのか重いのかわからんやつじゃ。じゃが滅びは全てにあるもの。そのまま滅ぶならそれはそれで良かったのではないか?滅びを受け入れぬ理由はなんじゃ?」
「それは…人間て種族が今まで生み出してきた生物の中で一番面白かったからですねー!私たち『神』に似せた存在作って星を繁栄させる!って大見得切っちゃったのもありますけど。信長さんならなんとなくこの感覚わかってくれちゃうんじゃないです?」
「くっくっくっ……面白い、か。そうよのぅ。知性を働かせてみれば、獣の如き所行もする。人の作る世は結局なんでもあるからのぅ。400年も経てば人は空を飛んだろう?南蛮も近いものになっておるんじゃろ?人は出来なかったことを乗り越える。況や肉体が死なぬこと以外は成さんとすれば成せぬことなどなかろう。それが人じゃ。わかるぞ童神とやら!」
「あ、今更ですけど私、コアトリクエって言いますので。」
「こあてりくてか。呼び辛い!そうさのぅ…。おぬし、なんか猫に似ておるから猫神じゃな!」
「猫って…。そういえば信長さんて配下の方にも猿やら犬やらでしたもんね…。はぁ…まぁこの際なんでいいです。で、転生受け入れてくれるってことでいいんですよね?」
「おぬしも大見得切ったからにゃやらにゃいかんだろう。先の世に興味はあるしやらんでもないぞ。じゃが条件はある。そもそも何をすりゃあいいのかもわからんしな。」
「条件!?」
信長と神コアトリクエの立場は気がつけば逆転していた。
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