7話 改革宣言
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食卓の上には時子の作った料理が並べられている。赤飯や鯛やら祝い事の料理、といった感じだ。
「「「「いただきます。」」」」
と一同声をそろえて夕飯が始まった。
道岳はまた孫溺愛モードにになり信長に赤飯を近づけた。
「信長も早う食べられるように大きくなるんじゃぞー!!」
-祖父上殿…旨そうなものを近づけて…これはまたやりようがないのう。
当然ながら食べれるわけもない信長はやるせない気持ちを抱えながら赤飯から顔をそむけた。
一同の食は進んでいく。
食事も半ばといったところで道岳がふと思い出したように信秀に問いかけた。
「そういえばあの件もう春花さんに伝えたんか?」
その問いに信秀も箸を止めた。
「いやーまだ。生まれて落ち着いてからって思ってたしまだ本決まりもしてないからもう少し具体化してからのつもりだよ。」
「決まった後じゃなく決まる前にちゃんと伝えぃ。何事も前もって嫁には言うておくもんじゃ。夫婦円満のコツじゃぞ。」
「そう言う言い方されると言うしかなくなるじゃん。と言うより目の前にいる状況で普通こんな会話振ってくる?」
「ふふふっ。道岳お義父様が元より有無を言わせるつもりがなかったってだけじゃない。それに私に隠し事?」
「はいはい。観念します。食事が終わったらな!」
「あら?それなりに大事なのね。楽しみにしておくわ。」
信長は直感的にこの話を聞き逃してはいけないと感じ眠気と必死に戦っていた。
時子はこの会話を聞いて箸を止めてキッチンへと向かう。どうもお湯を沸かしに行ったようだ。
数分後、暖かいお茶を持って戻ってきた。
食事も終盤。お茶を啜りながら道岳が信秀へと目線を送る。
それに気づいた信秀は観念したようにため息をひとつ吐いて真面目な表情になって切り出した。
「さっきの親父が振ってきた話なんだけど…俺再来年の都議選に出ようと思ってるんだ。さっきも言った通りまだ本決まりじゃないんだけどさ。」
道岳は平然と、時子と春花は驚きの、元親は…不愉快そうな表情でこの一言を聞いていた。
一同の表情を見て信秀が続ける。信秀の目が輝きを増していく。
「まぁそうなるのはわかるんだけど、前々から考えてたことではあったんだよ。親父とは話してたんだけど、今の景気って正直やばい気がしててさ。たぶんもう2、3年したら一気に景気悪化して社会が大変なことになると思うんだ。だから政治の世界に身を置いて…この子が成長した先の日本がもっと良い国になるようにしていきたいんだ。」
今度は春花があきらめたような声で切り返した。
「やりたいようにやったらいいわ。あなたがその目してる時って何言っても無駄だもの。それにあなたなら世の中面白くしてくれそうだし。」
その声を聞いて時子が重ねる。
「挑戦するのはいいけど春花さんと信長ちゃんの生活はしっかり守りなさいよ。私が言えるのはそれだけ。」
元親は相変わらずの表情で黙って話を聞いている。
道岳も変わらず平然とお茶を啜りながらこの会話を聞いていたが、女性2人の諦め声を聞いて切り出した。
「せっかくの息子の挑戦じゃ。気持ちよく受け入れてやらんか。」
時子がそれに応える。
「そうは言っても驚きがまだ勝ってるのよ。すごくいいことなのは理解しているわ。どこかの政党から声でもかかったの?」
「いや、そういうわけじゃないよ。無所属かそれこそ政党立ち上げるって考えててその辺りはまだ煮詰まってないから話すのもまだだと思ってたんだ。」
これを受けて時子は道岳に目線をちらっと送ってから返した。
「…お父さんも言ってたけどこういうことはそこまで話が進む前にせめて春花さんにはちゃんと伝えなさい。生活が変わるんですから。私がどれだけこの人に振り回されてきたことか…それで喧嘩になってるの何度も見てきたでしょ?」
道岳は少しバツが悪そうな表情になりながらも信秀に「だから言っただろ」と言わんばかりのドヤ顔を向けた。
その顔を見て春花が
「やっぱりそういうところも親子なんですね!」
とにやけながら返した。この一言で場が軽くなった。
それを察した信秀が笑顔を春花に向ける。
「ごめんな。これからはちゃんと相談するようにするから応援してくれよな!」
「はいはい。この子の未来の日本を創るって言われたら私も一緒に頑張るしかないわね。でもどうして都議なの?」
「都議で経験と足場を作ろうと思って。正直今の政党政治には色々思うところがあるから、その辺も変える。そのための足掛かりとしてまず都議。そこから都知事、国会議員と目指していくつもり。」
この発言に道岳が一気に真剣な表情になり一喝する。
「これ!男がやるというなら総理大臣まで目指すと言わんか!頂点を目指さんものが何かを成し遂げられると思うな!権力者になりたいなんて目的じゃないのはわかっておるが、結局何かを変えるのに力と立場は必要なんじゃ。信秀…お前がやりたいと思うことはそこまで行かんと成せることではないぞ。」
「…そうだな親父。まだ考えが甘かった。ありがとう。」
この会話を聞いて春花が信秀をにらみながら切り込んだ。
「まだ言ってないことがありそうね。素直に全部吐きなさい!」
「話すよ…そんな顔するなって。今の政治ってさどんどん政治家のための政治になってる気がするんだ。このままずっと変わらずにいったら20年30年後にはとことん酷い状況になると思うからそもそもの政治の在り方を変えるために政党政治…間接民主主義自体変えていく必要があると考えてる。そのためにどうするか…っていうのはまだ考えがないんだけどさ。こういう疑念があるから政治家になろうと思うんだ。」
信秀の根幹にある想いが伝わったのか春花は優し気に微笑みながら応えた。
「…なるほどね。私は…こんなことしか言えないけど、とことん応援するしあなたの隣にいるから頑張ってね!」
「ありがとう春花。ってここまで話が進んじゃったけどまだ本決まりじゃなかったのに…これやること決定してるよね?」
道岳が渾身のドヤ顔で信秀に言う。
「これで後に引けなくなったじゃろ?」
「しっかりと親父の手のひらで転がされたよ。でも自分の中でも整理ついたからこの道を行くところまで俺は行くよ!」
「うむ。わしの名前やら経済力や人脈。使えるものはなんでも使え。代わりに何があっても権力に溺れるな。やれることは全てやる代わりに何があっても人の道から外れることはするな。これは肝に銘じておくことじゃ!その前提でわしも全力で応援するぞ!」
「ありがとう親父。まだ2年あるけど…こうなったからには走り始めるよ。」
方向が決まってみんなで応援しよう…そんな空気になる中、元親が小さく呟いた。
「だから俺が兄さんの後に…。」
この呟きを辛うじて聞き取ったのは信長だけであった。
-つまりわしの周りで政治に関わるのは親父殿か。それもこれから始まると。そうなるとわしのすべきは今の政治体制や政治への入りを学ぶことか。祖父上殿は使えるものは使えと言った。それほどの力がある人物ということ。会社というものの規模もあるのじゃろう。そして気を付けるべきは叔父上殿か…。おそらく親父殿にいい感情がない。この手の血縁内でのいざこざの種は早めに摘まんと後々に響く…か。こういう人間の業は変わらんものじゃのう。叔父上のことは猫神にも問いただしておかんといかんな…。
信長はこの会話から得た情報を整理しながらゆっくりと眠りについた。
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