6話 叔父元親という人間
3000PV突破!
本当に嬉しいです。まだまだ序盤も序盤なので頑張って書いていきます。
信長が力尽き眠ろうとしていた頃、実質リビングを追い出された男3人は道岳の書斎にいた。
時子と道岳の目線でのやり取りを察していた信秀はさらっと切り出した。
「で、程よく追い出されたけど見せたいものも特にないんだろ?」
「ま、そうじゃな。適当に時間潰しておれば飯の時間になろうて。」
そう言いながら道岳は自身の机の椅子に腰かけた。
すると少し冴えない表情の元親が切り出した。
「甥っ子くん騒ぎ始めたの…俺のせいかな?」
信秀はそんな弟の発言と表情を見て、また始まったよと言わんばかりの呆れ気味の顔で切り返す。
「そんなことないんじゃない。環境変わって疲れただけとかそんなのだろうからいちいち気にすることでもないよ。」
「そうだといいんだけど…俺のことめっちゃ見てたじゃん。」
変わらない元親に信秀は続ける。
「ずっと誰に対してもそうなんだよ。俺が言うのもあれだけど不思議なくらいに周りのこと見てるというか何か探ってるというか…そんな感じ。きっと好奇心がすごい子なんだろうからちょっと大きくなるだけでもこっちの身体が持たないくらいに振り回される予感はしてる。」
と、少し先の未来を想像しながら幸せそうに言った。
その信秀の顔を見て元親は嫉妬を覚えた。
「本当に兄さんはいいよな。素敵な奥さんもらって子供もできて、自分のやりたいことやってさ。」
そう言うと元親はため息をつきながら机の端に体重をかける。
そんな兄弟のやり取りを聞きながら道岳は切り出した。
「小雪さんだっていい奥さんじゃし、元親の仕事ぶりにもわしは親としてじゃなく社長として満足しておるよ。ただわしの息子だからと信秀の後に据えたわけじゃない。結果の出せないものにわしは役職も責任も持たせんよ。元親もわしや信秀のことなど考えずお前の考えるようにやってみたらよい。それで失敗してもケツくらい拭いてやるから思いきりやってみい!」
「…本当親父は相変わらずだよな。それくらい気楽になりたいよ。」
「なれるじゃろ。お前もわしの息子じゃからな。」
言いながら道岳は笑った。元親もこれ以上この空気を引きずっても仕方ないと話題を切り替える。
「そういえば甲斐部長の件って俺が聞いても大丈夫なやつ?」
「どうせ泣き言じゃろうて。内容はわしもまだどれの事かわからんからまた週末にでもこっちに飯食いに来い。その件はその時じゃ。」
そんな会話に信秀が口をはさんだ。
「まぁ第二は親父の無茶振り部だからなぁ…。甲斐部長がハゲないか心配だよ。小雪さんもまだ第二にいるんだろ?」
元親の嫁、小雪も道岳の会社の第二開発部に所属しているようだ。
だからこそ元親は甲斐部長の相談の内容が気になっていたのだ。
「そうなんだけどなんも教えてくれないからさぁ。俺ってそんなに信用ない?」
「小雪さんは真面目じゃからのう。わしが第二に言うておる情報漏洩厳禁をとことん守っておるだけじゃて。仕事は仕事。家庭は家庭じゃよ。」
「そうならいいんだけどなぁ…。」
この元親という男は自信がない。大企業の社長の息子に生まれ色眼鏡で見られる人生を歩んできてしまっているからだ。
兄信秀はそういった色眼鏡を気にしなかった。長男として厳しく育てられたのもあったであろう。
だが元親は信秀と比べると少し甘やかしてしまったところがあった。その結果、周囲の目線が気になって仕方がなくなってしまった。自身の思いよりも周囲の期待や機嫌取りを優先してしまうのだ。
良く言い換えれば空気が読めて場をうまく回せる人物なのだが、それを元親自身が強みとしてとらえられていない。
信秀はこの弟の内面に多少感づいていて、裏でフォローしていた。しかしそれは「兄のほうが出来のいい人間」だとアピールしているようにしか映っていなかった。
この絶妙な関係が後に信長を巻き込んだ大事へと発展することになることとはまだ誰も考えていなかった。
その頃信長は春花によって寝かしつけられてしまっていたように見える。
キッチンでは時子が腕を振るっている。
春花は信長の寝顔を眺めながら笑顔で言った。
「道岳お義父様たち、そろそろ呼んで来ましょうか?」
時子は作った料理を盛りつけながら春花に返す。
「そうね!信長ちゃんが寝てるから静かに!って釘刺しておいてね!」
「わかりました!」
時子の一言に春花はいたずらに笑いながら男3人を呼びに行った。
少し沈んだ空気になっている道岳の書斎に入ると
「晩御飯もうできるのでリビングにどうぞ!」
と笑顔で3人に伝えた。3人も空気を切り替えて
「すっかり寝おったか。寝顔も可愛いのう。可愛すぎてどうにかなってしまいそうじゃわい。」
と道岳が孫溺愛モードに一気に変わる。
すかさず元親も乗っかり
「ほんとさっきまでの社長の顔が台無しだよ親父!」
と軽口で会話に入ってきた。そんな元親の切り替え方に少しの不安を覚えつつも信秀も一緒にリビングへと向かった。
信長は春花の腕の中で目を閉じながらも動いていることを感じ、静かに聞き耳を立てていた。
-母上の腕の中…温いのう。しかしまた全員が集まるようじゃ。正直本当に眠いが…聞けることは聞かなくてはならぬ。
そして食事が始まった。
率直な感想や、このすぐ下の評価入れて頂けると励みになります!よろしくお願いします!