1話 終わりと始まり
初めて投稿するので至らない点がいくつもあるとは思いますが読んで楽しんで頂ければ幸いです。
「さぁ一統の先へ。果てなぞない。征くぞ!」
そう言うとその男は目の前の扉を開け、弾けるようにその光の中へと駆け出して行った。
1582年6月2日-京 本能寺
日の出始めだというのに騒がしい。
その喧騒の中に非常を感じたその男は微睡む事もなく、すっと目覚め周囲を確認する。
そして近づいてくる足音を警戒しつつも、その足音で近づいてくるものを察した。
その男の寝屋の障子が開く。
それと同時にその男は
「別心か。蘭、如何なるものの企てぞ。」
と、入ってきた小姓を見るまでもなく要件を告げた。
「桔梗紋。明智が者と見え申し候。」
小姓も即答で主の言葉に応える。
- 光秀…?考える時はない…か。
「さらば是非におよばす。蘭!弓を持てぃ!」
「う、上様!?逃げるのではなく一戦を!?」
「蘭よ、わしはこの戦国の…下克上の世をわしの思うがままに駆け抜けてきた。今川を討ち、三好を退け、室町を廃し、最強と謳われた武田を滅ぼした。だが、ぬかったわ。わしと城介が寡兵で京におる。将も兵も大半は戻れぬ場所におる。こんな好機に大手を振って軍を引き連れて行ける。光秀もやるものよのう。いまだ下克上終わらず。滅ぼされるものとして一戦もやらんのでは折角の舞台が勿体なかろう?」
どこかこの状況を楽しんでいるような主の言葉に小姓はその言葉とは裏腹の感情を察する。
そしてそれは小姓の抱える想いと同じであった。
「上様…。私は上様の一統の先の世を…」
しかし…そこで主は一喝する。
「蘭!貴様には黄泉路への先陣を申し渡す!わしと共に最期の舞台をしかと舞い、そして散ってみせよ!」
小姓も既に覚悟は決まっていたが、未練も鬱憤もあった。
だが、主の『共に』の言葉…もう問答も未練も全ては必要なかった。
「はっ!上様!黄泉路への先陣仕りまして候。さらばご準備をば!」
怒号と銃声が太陽の登り始めた京にこだまする中、主…織田信長は最期の一戦に臨もうとしていた。
一統を成すことが出来ずに散りゆく無念と、この下克上の世で滅びも含め堪能出来た一種の満足感とが混ざり合いなんとも説明のつかない感覚に包まれる。
が、そんな感情に浸る間もなく敵は殺到している。
「今生最期の戦じゃ!皆の者!征けぃ!末期の舞台を存分に舞おうぞ!」
そして…
「火を放てぃ!わしの首取られてはならぬ!急ぎ火を放てぃ!」
- 滅びの時…ぞ。
信長は一人奥の間へと火に包まれゆく本能寺を進む。
本能寺の中心部、信長の執務の間へと。
- 人間50年にはちと足りなんだが、堪能はできた…か。しかしぬかったわ。誠にぬかった。一統を…。先の世を…。こればかりは未練じゃ。
「思うても思うても今が今際の際じゃ!織田三郎信長っ!今生は終いぞ!」
未練を断ち切るように自身へ大音声で一喝を入れる。
そして小太刀を抜き、鞘を投げ捨て自らの人間最期の瞬間を迎えようとしたその瞬間 -
めきっ…!ガガガッ…ズドンッッ!!!
燃えた天井が崩れ、その下敷きになってしまった。
「自害すらさせてはくれぬ…か。因果なも……の………よ………」
信長の意識はそこで途絶えた。
- 白い?なんじゃこれは…?
意識を失った信長からすれば、次の瞬間、といった感覚である。
ただ真っ白な、光の中のような空間に信長は漂っていた。
- 死後の世界…?そんなもの要らぬのだが…
戸惑いの中にいると声が聞こえた。
「あ!起きました?いやー色々と大変でしたねー!面白くて見入ってたらギリギリになっちゃいましたよー」
そこにはわけのわからん幼女がわけのわからん事を言っていた。
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