異世界で目覚めたら美人がいた。
「うーん、うん!いい感じ! これでいきましょう!」
こうして僕の異世界での姿が神様に決められた。
異世界ではどうだかわからないが、そこそこの高身長に男から見てもイケメンなこの画面の向こうの彼が自分だとはにわかに信じがたい。
まあこの世界の神様が作った体だ、大切に使わせてもらおう。
「じゃあこの世界の事、お願いね。
私達は直接干渉できないけど、アドバイスとかは出来るから念話のスキルで呼びかけてね」
魔王と神様がグルって良いのだろうか。
まあそういう作品も読んだことあるし、一々考えなくてもいいか。
「そうそう、気楽にやって頂戴。
貴方は彼の地で最強の生物として君臨し続け、思うままに生きていいのよ。
さて、じゃあ行ってらっしゃい、貴方の次の人生に幸多からんことを」
その言葉を最後に僕の意識は強烈な睡魔に襲われた。
ああ、次の目覚めを楽しみに思うのはいつぶりだろうか。
まあ、良い眠り程妨げられるものである。
「陛下! もしや魔王陛下ではありませんか!?」
女性の声だ、綺麗な声だな、まあちょっと声量が大きいけど。
ん? というかどういう状況だ?
もしかしてもう着いたのか?
まだ眠気は消えていないが、目覚めないわけにもいかないか。
僕は少しずつ目を開ける。
見えたのは僕を心配そうに覗き込む一人の女性の顔、美人だ、元の世界なら間違いなくモデルや女優になれそうなほどに……いや美人なだけで務まる職でもないのだろうけど。
肩までの黒髪、紅い瞳、側頭部から伸びる短い角が猫耳付きカチューシャに見える。
ああ、異世界に来たんだなあ。
そう実感したのは間違いなくこの時だった。
「ここは、城か」
ん、声が、ああそりゃそうか転生してるなら声も違うか。
「魔王様、なのですか?」
目の前の女性に改めてそう聞かれて若干の恥ずかしさを僕は感じていた。
役目を請け負ったとは言え、魔王を自称する事になるとは。
「そうだ、私が新たな魔王……」
しまった、ちょっと威厳を出してみようと私はとか言っちゃったけど、そもそもこの体、新しい僕の名前を考えてなかった。
ここは玉座の間だろうか座っている椅子がやたら豪華だし、だだっ広い部屋だから多分そうなんだろうけど。
いかん、目の前の美人が僕の言葉を待ってるのが嫌でも伝わってくる、考えろ、今この場で。
うーん、魔王っぽい名前、魔王っぽい名前、思いつかんなあ。
あ、そうだ、まずは名乗ってもらおう、参考になるかも。
「君の名はなんというのかな?」
「も、申し訳ありません私は、この玉座の間の清掃を言い渡されています、ただの使い魔で名は与えられておりません」
嘘やろ!?!?
あっぶねえびっくりして声に出るところだった。
この美人さんが使い魔?
いやいや、女幹部とか四天王とかの間違いじゃないの?
ゲームなら俺の後ろに立たせてスクショして、コミュに魔王と参謀とかタイトルつけて投稿するわ!
どうすっかなあ俺の名前とこの人の名前。




