【第四章:My Love】
【第四章:My Love】
【これまでのあらすじ】
罪人の塔からナローとともに脱出した20億頭のマウンテンゴリラ。彼らは瞬く間にこの星の生態系を覆してしまった。人類は彼らに対抗するため『ゴリラハンターズ』という組織を創設する。そしてその中でも選り抜きの精鋭によって構成される『ハンターズ00』はこの『ゴリラ・ウォー』の引き金を引いた究極の危険人物・ナローを暗殺するための特務組織だった。落ちこぼれから世界を壊すテロリストまでに変貌を遂げたナロー。ナノテクノロジーによって生み出された調整人間『ジュード;PV7型-89号』は彼の半生と足取りを追ううち、自身の所属する『ハンターズ00』の局長である勇者・ユウの影に気付く。問い詰めるために局長室へ『ジュード;PV7型-89号』が訪れたまさにそのとき! ユウを襲う刺客の影が! 「危ない!」腕の振り抜きざま内蔵ブレードを展開した『ジュード;PV7型-89号』。鍔迫り合いの中で見たのは、死んだはずの彼の妹の姿だった。「――――康子!?」けれど刺客は答えない。闇の中へ消えていく。「局長、これは一体――――」ユウに問いかけようとした彼に返されたのは、ただ刃の一閃だった。「……優秀すぎるな。これでは、俺よりも先にナローに辿り着かれてしまう」生命維持装置が悲鳴を上げている。「あいつを殺していいのは、俺だけだ」薄れゆく意識の中に彼が見たのは、かつて家族と過ごしたクリスマスの光景だった……。「康子……」声は、もはや。
【本編】
「しばらく見ないうちに、随分太ったんじゃない?」
「……その声、康子か」
夜、埠頭。
トレンチコートにハットを被った両目眼帯の男が、背中からかけられた声に応えた。
「何の用だ?」
「何の用っていうのはちょっとひどいんじゃない? 用がなくちゃアタイはあんたに会いに来ちゃいけないのかしら。ナロー?」
「フッ……」
両目眼帯の男……ナローは笑う。
「全然関係のない話だが、『いけないのかしら』に含まれている『井の頭』の部分に……今気付いた」
振り向く。
もはやその顔は、康子の知るかつての気弱な青年の顔(図1)ではなかった。
険しい。数々の惨劇を乗り越えて、危険な……そう、危険な獣の顔(図2)になっていた。
(図1)
___( ^ω^)____
¯¯¯¯¯¯¯¯¯ じめん
(図2)
( ФωФ)
「変わったわね……あなた」
「君は……変わっていないな」
「あら、両目に眼帯をしてるから見えてないだけじゃない?」
「ふふ、これは一本取られた」
「ファッション眼帯は一本だけにしておいた方がいいわ」
「ふふ、二本も取られてしまった。剣道の試合だったら私の負けだったよ」
「これは剣道の試合よ」
「何ィ!? 図ったな!? ぐわァああああああーーーーーーッ!!!」
炸裂!
敗北のショックでナローの肥え太った腹部は花火のように破裂した! 見るも無残! 跡形もなく彼の身体は粉々になると、海風に乗って遥か彼方、闇の向こうへ消えていった!
取り残された乙女は一人、祈りのように胸の前に指を組み、そして囁いた。
「グッド・バイよ。アタイの愛した人……」
【第四章:My Love――――了】
【To Be Continued……】