魔法を使ってみたおはなし
「さて、魔法を使う前に1つ言っておかなければならない事があるの。」
「何ですか?」
「実は、私たちって声を出さなくても話せるのよ。」
「え、そうなの!?」
「そうよ。やってごらんなさい。」
え、凄くいきなりだね!
そんなこと出来るのかな…?
『え、エミリー?聞こえてる?』
心の中で、エミリーの事を考えながら話しかけてみる。
『聞こえてるわ。それで合っているわよ。』
『うわぁ!ビックリした!
なんか、慣れないね。口は動いてないのに話せるのって。』
『すぐに慣れてくるわ。そもそも、人の前で一人で話続けてると、おかしいでしょ?』
『あ、エミリーは人から見えないように出来るんだっけ?』
『そうよ。今はあなたにしか見えていないわ。
さて、魔法を使いたいときは、心の中で使いたい魔法を想像してみなさい。』
『想像…エミリーはどんな魔法が使えるの?』
『なんでも使えるわよ。だって神の妹ですから。』
『おおー!凄い!じゃあ、えっと…これ!』
心の中で、魔法を想像してみる。
『任せなさい。』
目の前のエミリーが、胸の前で手を組んだ。
すると、ぽんっ!っと水のボールが目の前に出てきた。
「わー!凄い!魔法だぁ!」
「ふふん!これぐらい余裕よ。」
「えっと、じゃあ、次はこれ!」
また魔法を想像してみる。
すると、またエミリーが手を組んだ。
そして…。
ガチンッ!っと、目の前に浮いていた水のボールが氷になった。
バレーボールぐらいの氷のボールが目の前に浮いている。
「エミリー凄いね!」
「ふふっ、もっと誉めてくれても良いのよ?
これぐらい簡単だしね。」
「凄い…!んー、じゃあ、後は私の想像力次第ね。」
「そうよ。他にはないの?」
「他の魔法…あはは、思い浮かばないや。」
うぅ、火とかは危ないし…想像力がないなぁ。
「じゃあ、こんな事をしてあげるわ。」
エミリーが両手の平を私の方に向けた。
「え、きゃっ!わわ、体が浮かび上がっちゃった!」
床から5cmぐらい体が浮いてる。
私の体の周りに薄いピンク色のオーラがついてるから、これで浮かしてるのかな?
「どう?魔法っぽいでしょ?」
「うん!エミリー凄い!」
「さっきから凄いしか言ってないわよ。じゃあ、行きましょうか。」
「え、どこに?」
「そりゃ、外しかないでしょ。」
エミリーが窓の方を向いたと思ったら、勝手窓が開いた。
そして、私の体がふわふわと外に出ていった。
「わわっ、怖いよ!エミリー下ろして!」
「ふふっ、やーよ。
じゃあ空の旅に行きましょうか。いくら叫んでも、人に聞こえないようにしてるから、安心して叫んでね。」
「きゃーー!!! 待ってー!!!速いし高過ぎ!!」
私の体がどんどん地面から離れていく。待って、ヤバい、怖い!
「私がいるから落ちないわよ。ほら、目を開けなさいな。」
エミリーがそんなことを言ってるけど、無理なものは無理だって!
「はぁ、仕方ないなぁ。…真由、怖くないわ。」
エミリーの声が聞こえて、体の動きが止まった。空中に浮いてる気がする。
「ほら、大丈夫だから目を開けなさい。」
「うぅ、分かったよ…あれ?全然怖くない!」
目を開けると、結構高いところにいるはずなのに、全然怖くなくなっていた。
なんか空中に透明な足場もあるから、今はそこに立っている。
「怖くないって言ったでしょう?で、どう?魔法を使ってみた感じは?」
「楽しかったよ!ありがとね。」
「どういたしまして。じゃあ、もうちょっと空の旅をしましょうか?」
「うん、お願い。」
また私の体がふわぁって浮いた。でも、もう怖くない。
私たちはそのまま飛ぶのを楽しんだ。
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