少し遅れた自己紹介
秋隆教授による突然系イベント『質問タイム』は、詩歌氏の涙によって無事に閉幕。そのまま午前中の授業に入り、ようやく昼休みとなった。
(初日から失敗するなんて……)
授業中は教室内に、常に微妙な空気が流れていた。
(たぶん私のせいだよね……いや、私しかいないか……)
気持ちは完全にブルー。おかげで今日の授業内容が、まったく頭に入ってこなかった。
(もうこの学校で友達、できないだろうなぁ……)
そう考えていたのだが……
「おーい雨宮ちゃん、一緒に飯食おうぜ飯!」
クラスのムードメーカーこと九弦は、何事も無かったかのように話しかけてきた。
「え、え? え⁉」
「あ、私も食べていいですか? たぶん一人でそこのバカを相手にするとひどく疲れますよ」
「なんで人を厄介者みたいに言うんだよ⁉」
「本当にいいんですか……?」
睨み合う二人に、詩歌は嬉しさと不安の混じる声で訊いた。すると二人は揃ってキョトンとすると、
「当ったり前だろ! 俺たちはもう同じクラスなんだからさ!」
「そうですよ、まあこの人は、知能指数的に同じ人間と思えないのはわかりますけどね」
「……なんで今日のお前はそんなに俺に冷たいわけ? もう少しで泣きそうなんだけど俺」
「さーて、なんのことでしょうかねぇ」
「テメェ! ニヤニヤしてるってことはわざとだろ!」
「あ、あの……」
先程同様、二人のやり取りについていけなくなる詩歌。
すると、そこに、
「あら、じゃあアタシも一緒に食べていいかしら」
昼休みが始まってから若干不機嫌だった、夏音が来た。
「お、夏音! いいぜ、一緒に食べようじゃん!」
「ようやく機嫌も直りましたか。海斗さんに昼食の誘いをフラれたときは、あれだけしおらしかったのに……」
「九弦、落ち着いて深呼吸を三回。雨宮さんが圧倒されてるわ。それと佑夏、アンタは昼食の後、覚悟してなさい」
すると九弦は律儀に深呼吸を始め、佑夏はこれからの未来を想像して震えだした。
そしてそんな二人を無視して、夏音は詩歌の方を向く。
「……さっきはアンタの自己紹介で終わったからね。今度はアタシらが自己紹介させてもらうわ。稚羽矢夏音です、改めてよろしく、雨宮さん」
「俺も俺も! 嵐ヶ原九弦だ、よろしくな!」
「白石祐夏です。さっそくですが、何か面白いニュース持ってますか?」
三人から自己紹介をしてもらった詩歌は、慌てて立ち上がった。
「こ、こちらこそ、よろしくお願いいたします!」
「おう! じゃあ飯でも食いながら、このクラスのルールを教えてやるよ」
そう言った九弦の顔には不適な笑みが浮かんでいた。
「ルール、ですか?」
「そう、ルールだ。例えばな――」