乖離の箱庭
昔、自分が小説練習用に初めて執筆したものです。
某科学と魔術が交差する作品とかなり酷似しております。
どうか生暖かい目で見守ってくれるとありがたいです。
初めてその『異常』が現れた時、世界は大騒ぎになった。
それは人の形をしていて、意思疏通をすることもできる。一目見ただけでは、そこらの人間と何ら変わらない姿形をしていた。
だが、持っているものが違っていた。
ある異常は掌から火を出して、ある異常は翼も無いのに空を飛ぶ。
有り体に言えば、それらは能力を使う事ができたのだ。
それは、本来の人間にならば、絶対に扱うことのできない力。故に、『異常』が世界に知れ渡った時、人々は異常を恐怖し、しかし同時に嫉妬していた。
そして研究が始まる。数多の異常を様々な方法で研究して、その正体を暴こうと当時の研究者は血眼になって能力の源を探し続けた。
その結果、異常はニンゲンの新たな進化の先駆けということが判明する。その内容が世界に知れ渡ると、人々は『異常』を『覚醒者』と呼ぶようになった。
正体が解るや否や、人々の恐れは羨望へと変化し、更なる研究成果を求めた。
―――自分が覚醒者の力を得るには、どうすればいいのか。
先程も言った通り、覚醒者は人が進化した存在。これに旧人類が到達するとなると、普通は体を作り替える。則ち一度死んで、生まれ変わって新たな人生を歩むのが妥当。
だが人々に、そんな度胸は無い。というより、本来『死』を許容できる生物は存在しない。
だから求めるのは、自分が何の危機を歩まずに力を手に入れる方法。それを得るために今でも尚、研究は続いている。
時が過ぎると共に増加していった覚醒者を、一つのエリアに集めてそこで生活させる。
更にその周囲へ研究機関を設けて、研究者は覚醒者と関わりながら生態を調べていく。互いに敵対しないよう、物騒な騒ぎは起こさないと暗黙の了解を立てながら。
そうして作られた覚醒者の街は、『乖離の箱庭』と呼ばれ、世界各国に作られていった。
そしてこれは、そんな『乖離の箱庭』で様々な人間と交わりながら、その運命を背負って生きる一人の覚醒者の物語。
一章は毎日投稿します。
一応、この章で設定伏線のほとんどは回収するので(全部とは言ってない)、この後の章に関しましては未定です。
ひとまずリンカルナーツェの間繋ぎにでもなればと思います。