第九十六話 兄弟の策略
リリーダ・キャラベルは重い足取りで寮へと進み始めた。なぜ重い足取りなのかは、本人は十分に理解している。それでも、後悔はしていない。
とある教室で兄弟が会話をしている。その声は誰にも聞かれることはない。
「兄さん・・・僕はちょっとした冗談のつもりでしたが、これは使えますね。」
ケインが、ある写真を持って眺めている。
「ああ、たぶん本人が知ったら怒るだろうな。」
グランは思い出したかのように少し笑顔になる。
「昨日、クラスから逃げていたあの子が戻ってきた際、写真がどうとか話しているのが聞こえたんです。もしやと思い、撮影して良かったです。」
「さすがケインだな。さて、準備を始めるか。」
「はい!」
筋肉痛による猛攻撃を受けているアリミナールは、それでも優雅に紅茶を飲んでいた。
「あ~静かだ。」
これぞ、お嬢様だ。と何気なく考えているが、本当にお嬢様なんだよね。この学園には高貴な身分の人が多くて忘れているけど、一応アリミナールだってお嬢様なんだよ。
「あ~漫画読みたい。」
そう、私はアリミナール以前にオタクなんだよ。暇な時ほど漫画読みたくなるよね。こんな休みの日は、遊びに行きたいものだ。【そうだ、京都に行こう】とか無理だから!現実って厳しい。そうだ、どこかに行くのは無理だけど、リリーダを誘ってピクニックならいいかもしれない。寮の庭に行くだけだけどね。
コンコン。
「アリミナール様、戻りました!」
扉のノックと共に、リリーダの声が聞こえた。
アリミナールは扉を開けてリリーダを迎えいれる。
「リリーダちゃん!おかえりなさい。鍵ありがとうございます。」
「い、いえ。アリミナール様の頼みなら・・なんだって。はい。」
どこか言いよどんだリリーダがいたのだが、アリミナールは気づいていない。
「今、紅茶用意しますね。」
そう言ってアリミナールはカップを手に取る。紅茶の準備をしながら、話しかける。
「あのね、リリーダちゃん。お休みの日って暇じゃない?だからお昼とか・・。」
「あの!アリミナール様!」
アリミナールとリリーダが同時に話し出した。
「どうしたの?」
話しを一旦止めて、リリーダの話しを先に聞くことにした。
「はい。えっとですね。実は、お昼に時間があれば寮ではなく、学園で食事はどうかと思いまして・・・。その・・ダメですか?」
「もちろん大丈夫よ。」
ピクニックは後日でいいか、とアリミナールは考えていた。