第九十二話 妹=お兄ちゃんは常識です
ご令嬢たちが群がってきたのだが、妹を答えてもらうには男性が一番ではないかと思っていた。これもオタク故なのか?
このクラスで知り合いはクローしかいないのだが、攻略対象者とはリリーダを通して以外あまり関わりたくないため、クローの視線は無視した。
『女は度胸だ』ってどこかのジブ〇キャラも言ってたよね!この競技に推薦してきた委員長なら頭良さそうだし、答えられるはず。
「一緒に来て?」
「えぇ!?」
どこか、頼られたら断れないタイプの少し気弱そうな委員長の手を掴んでアリミナールはゴールへと走った。
「では、さっそく答えて頂きましょう!仮装者は、一言ヒントをお願いします!」
案内係のこの一言に驚愕する。え、聞いてないんですけど。一言って言われても、悩んでしまう。妹って何言えば理解できるかな?男のロマンってやつを言えばいいのか?
アリミナールは妹の仮装をしている。ひらひらとスカートが揺れる。レースをたっぷりあしらった衣装で、ぬいぐるみを両手で抱えている。身長が小さいため、誰に対しても目線を合わせると上目遣いになってしまう。
「お、お兄ちゃん!大好き。」
と言えば満足かぁ!なかば自暴自棄になったかのように、心の中ではツッコミを入れていた。アリミナールは恥ずかしいので顔半分をぬいぐるみで隠して目線だけ、委員長に向けていた。ああ、こういうのはリリーダとかさ、可愛いご令嬢がやるべきだと思うのよね。委員長もごめんね。とりあえず、後で謝るからさっさと答えてくれるかな。見つめられるのも気まずいからさ。
何かを納得したかのように委員長は正解を導きだした。
「あ!もしかして、妹の仮装ですか?」
正解!よくやった委員長。褒めて遣わす!
競技が終了したため、何度も委員長に謝った。さすが委員長というべきか、推薦したのは自分なのでと委縮している。
クラスに戻る前に、この仮装を着替えようとして移動している時だった。誰にも気づかれないように近寄ってきた人物がいた。とある妹属性から小声でお褒めの言葉を頂いた。正直嬉しくない。ただ通り過ぎただけのようにその人物は去っていった。
クラスの餌付けをしてくるご令嬢が、急いでアリミナールの元にやってきた。着替えをしようと移動していたのだが、捕まってしまった。
「アリミナール様!お急ぎでお願いがありますの!衣装については他の生徒が交渉中ですわ!」
「え?あの?待って!」
ズルズルと引きずられるように連行されてしまった。