第九十一話 妹、降臨
いやいや、仮装競技だよね?無理難題を押し付ける競技じゃないよね?オタクな私でもさ、妹の仮装なんて理解できないよ?妹設定キャラの仮装ならドンとこいだけどね!え、妹って普段なに着てるの?何身に着けてるの?妹いたことないからわからない!この世界では常識なの?混乱しかない。
わからないものの、足を止めるわけにはいかないので走る。なんとなくクラスのほうに目を向ければ、さきほどのご令嬢方も応援しているのか目が合った気がする。
第2コースに着けば備品が用意されている。この中に妹になる備品あるかな?と探していた。次のレースで使用するのか、備品はたくさん存在する。他の走者もあたふたしていた。
妹、妹、妹って何持っているのだろうか。帽子?は無難だな。パン、水、タオル、鏡、ってどんな仮装に必要な道具だよ!ツッコミ入れてる場合じゃない。目立ちたくないし、早く終わらせたい。あ、とアリミナールが顔を上げる。ひと際目立った備品が存在する。あれこそが、妹の備品ではないか!?と手に取って走りだした。
「まぁ、アリミナール様!あんな大きなぬいぐるみを持って本当に愛らしいですわ。」
「本当ですわね。この競技に推薦して正解でしたわ。」
「でも、あのぬいぐるみはどんな仮装になるかわかりませんわね。」
「あのぬいぐるみになりたいですわ。」
クラスの生徒たちがそんな会話をしていた。最後のひと言を言った生徒に視線が集中した。
第3コース、妹の衣装って何!?メイド服は違うな。このダサいTシャツ誰が着るの?あ、ドレスもある。でも違うよな。あ、この如何にもなフリフリ衣装とかかな?クマのぬいぐるみにはぴったり。それにしてもアリミナールはチビだから、このぬいぐるみがでかくて仕方ないな。さっきから走りにくいのよね。そして専用の着替えボックスでアリミナールは着替えた。うん、この着替えボックスから出たくないほど恥ずかしいな。コスプレは専門外なんですけど。って開会式で衣装チェンジした私が言えることじゃないか。
ゴール付近まできて、案内係から言われた。
「仮装の正解は、クラスの生徒の誰でもいいので、答える人を連れてゴールしてください。」
妹の仮装って誰がわかるの?とりあえず、クラスの生徒の男性を連れてくればいいのね。とアリミナールは理解して行動に出た。
クラスの生徒を見渡した。誰が一番正解してくれるのだろうか。