第八十七話 きっとそれは大切だから
アリミナールは後悔していた。見ず知らずの令嬢に対してかなり強気に出てしまった。
「しょうがないよね。リリーダの危機だったし。それに、もしかして私が悪役令嬢サボってるから、変わりの悪役令嬢が誕生しようとしてなかった?」
アリミナールからは溜息が出た。
それにしてもあの令嬢怖いな。グランに近づく令嬢ってことは高貴な身分なのはわかる。そのまま私をこの学園から追放してくれるのなら有り難いけど。あと、人にやられて嫌なことは自分もしないって親から習わなかったのかしら?私の言葉があの令嬢に届いていればいいのだけれど。
そこでアリミナールはハッと気づいた。本来の目的が達成されていないことに。最後に窓を見た時に全員いなかったことを思い出す。
「うん。作戦には失敗がつきものだよね。これからどうしようかな。」
憂鬱な気分もそのままに、用もなくなったため校舎から出ることにした。
アリミナールが校舎から一歩出れば、ある人物との出会いを果たした。
「もぉぉっ!なんで付いてくるのよ!」
リリーダ・キャラベルは、今世紀最大のイラつきを見せていると言っても過言ではない。
アリミナールが戻ってこないと知った今、リリーダはアリミナールを探して走り回っている。しかし、なぜかその他5人も付いてきてしまったのだ。この集団で探し回るのは目立つので注目の的になりつつある。
「学園に入ってから、アリミナール様との時間が減っています!それもこれもあなたたちのせいです!アリミナール様に悪い虫が付いたらどうしてくれるんですか!アリミナール様に集まる虫は最低最悪のやつらなんですから!」
5人は黙って聞いていた。お互い目配せはしている。
「いたー!」
6人が見たのは後ろ姿だった。膝をレジャーシートに付け、四つん這いになっている姿勢で、顔を相手のほうに近づけていた。口を少し開け相手はその子の口に、あるものを近づけている。後ろの気配に気づいたのか、あるものを近づけていたであろう一人は逃げて行った。6人が近づくより速くに逃げたため、誰だったのかはわからなかった。
「アリミナール様!」
その声に反応して、四つん這いからアリミナールは後ろを向いた。
「あ、見つかっちゃった。」
そう言ってその場から離れ、6人のもとにやってきた。
「ふふふっ!あのね、さっきまでイケメンがいたんだよ!」
アリミナールは笑顔でみんなに語りかける。