第八十五話 争奪戦、悪役令嬢の脱落
「あなた!聞いていますの?」
アリミナールはやはり、ただ黙ってその人物を見ていた。
返事をするよりも早くその人物は窓のほうに動き出した。アリミナールとは離れた窓から校庭の様子を睨み見ている。
「一体なんなんですのあの女!?許せない!」
包み隠しもせずに叫んでいる人物をアリミナールはただ眺めていた。
『この人誰?』
アリミナールは心の中で自問自答していた。
しばらくたってもその人物は窓を眺めているため、アリミナールも一瞬気になる彼らを盗み見たが、そこには誰も映っていない。
「消えてしまいました。」
謎の人物の独り言は続いていた。
「ふん!あ、そういえばあなた!さきほどから言っていますが、ここは立ち入り禁止ですのよ!こちらで何をしていますの!?」
人のことを無視してからの攻撃にアリミナールは目を丸くする。
「あ、あの・・・先生に許可を頂いて、こちらにいたのですが・・。」
とりあえず、なぜかお怒りで、なぜか偉そうにしている令嬢らしき人物にアリミナールは説明をすることにした。
「あら、そうでしたの?伺っていませんでしたわ。」
そう言い終わると、その令嬢らしき人物はなにかに気づいたのかアリミナールのほうに近づいてきた。そこでようやくアリミナールもその人物のことを思い出した。名前も知らないが、グランと言い争いをしていた人物と似ていると思い出す。
「あなた、この前の方ね?私にハンカチを貸してくださったでしょ?」
そこでアリミナールはコクリと頷く。
「これも何かの縁ね。私の話を聞いてくださるかしら!」
まさかの疑問形ではなく命令形。アリミナールは今すぐここから出たい気持ちにしかならなかったが、その令嬢らしき人物に腕を掴まれてしまった。逃げられない。
「私にはあの方しかいないのです!私は完璧な相手としてこの上ない身分でもありますし、容姿だってこの通りですわ!なにを断る理由があるというのですか!この私以外にあの方の隣に立てる女性などいないのです!」
正直に言っていいかな。帰りたい。このわがまま令嬢に付き合ってられない。私は命かかってるんで、恋のあれこれをなぜ聞かねばならんのだ。お願い誰か助けて~。
そんなアリミナールに助けは来ない。
そしてその頃。
青いひらひらの衣装を身に纏い、右往左往していたリリーダの姿があった。そこにはグラン、ケイン、ガイ、ナリク、クローの姿もあった。