第八十二話 争奪戦、その頃彼らは
「元婚約者の前で何してるんだ?アリミナール?」
いつものニコニコ顔を崩すことなく、クローが二人を引きはがしながら言ってきた。
「クロー君もそう思うよね?」
「アリミナールは話を聞かないな!こいつのどこに可愛さがあるんだよ!さっきから怒っているようにしか聞こえない!」
これまたキョトンとした顔でアリミナールは聞いていた。
「この良さがわからないかな~。ほら、女の子が照れてるけど本音を言えない姿は可愛いでしょ!?」
「同意を求めるな!」
クローは呆れたように言い放った。
「おい!勝手に俺を曲解するな!だっ、誰が照れているんだ!」
「ほら!これだよ!」
アリミナールは満足そうに笑顔で納得しているが、ナリクとクローは納得などしていない。
そんな時だった。
「アリミナール・・・今、一体何をしていたんですか?」
邪悪な気配が忍び寄るかのように寒気が広がった。そこには、グランがいた。
「グラン様、お待ちしておりました。他の皆様は?」
「それより!」
ドーン!
グランの話を途中で切って現れたのはリリーダだった。勢いに任せてアリミナールに突進してきた。アリミナールは、なんとか体制を整えてリリーダを受け止めていた。
「お待たせして申し訳ありません!なぜか邪魔ばかり入ってくるのです!」
さらにリリーダは、私にも誰にも聞こえない声で続けた。
「他のやつらの邪魔をしたはずなのに、なんでここに全員いるの?」
少し遅れてケインとガイが到着した。
「驚くほど僕らの邪魔をする誰かがいたんだ!遅くなってごめんねアリー!」
ケインが到着早々に言うと、ガイも続いた。
「・・許せない。誰かが故意にしたに違いない。」
「まぁまぁ、ガイ様までそんな怖い顔して。それよりも早く昼食にしませんか?お腹すいちゃいました。」
私の一言で不思議な7人の集団が移動することとなった。アリミナールは知っている。グランが全員を引き連れてどこに連れて行く気なのか。生徒会役員は、行事に駆り出されるかわりに、休息をしっかりと行えるように場所取りされている。ましてや、ファンクラブのあるような気品あふれる攻略対象者たちには必要不可欠だろう。
大きな樹木が立ち並ぶ中、レジャーシートを引いて誰かの王族の使用人であろう者が立っていた。私たちが到着すると、即座に準備に取り掛かっていた。いくら王族と言っても、野外の食事がテーブルではないことにアリミナールは安堵していた。
*現在制作中、近日公開予定。