第八十一話 争奪戦、その頃私たちは
「秘密。」
人差し指を唇に当て、アリミナールはリリーダにそう伝えた。その姿をみてリリーダは悶えているようなので無視した。
どのクラスも全力で挑んでいるようだ。その証拠に現時点での順位は3年生に限らず、2年生も健闘しているらしい。
さっそく昼食時間のアナウンスが流れたというのに、アリミナールの目の前には全員揃っていない。現在揃ったのはアリミナールと、ナリク、クローの3人だけだ。校庭の木の下で3人して待っていた。
「おかしい。」
そう呟いたのはアリミナールだった。
「俺知ってるぜ。リリーダのやつはクラスに何時間もいないから、捕まってた。当分来れないだろ。」
笑顔でクローはそんなことを話す。
「リリーダちゃん・・だからクラスに戻りなさいって言ったのに。」
肩をガクッと落とした。主人公よ、そろそろ一人立ちしてくれないか。イベント進まないだろが。
「あのさ、もう戻っていいか?これも返す。」
ナリクがアリミナールに話しかけてきた。そして手には青いリボン。
「ナリク君・・これ私のじゃない。」
「お前が無理矢理渡してきたんだろ!」
「借りたものは本人に直接返さないと。」
ナリクが怒っていても可愛いと思っているアリミナールには、怒鳴られても効果はない。
「お前に借りに行っただけだ。他に頼めるやつなんていないからな。」
「ナリク君は人気者だから、誰でも貸してくれるよ?」
「何言ってんだ?俺は嫌われてる。」
クローはその言葉に少し納得している。昨日のクラスの対応をみれば一目瞭然だ。
「もぉ~ナリク君はわかってないな!可愛いは正義なんだよ!本当可愛い!」
「この前から思ってだが、お前目悪いのか!?」
キョトンとした顔で見上げていれば、何かを諦めたような表情をするナリクの姿がみえる。たしかに私は無条件でナリクを萌えの対象にしている。さすがに気をつけないとダメだと思うのだが、これは前世がオタクであった名残りなのだ。オタク故に直せないだろう。
「可愛いとか、男の俺に言う言葉じゃないだろうが。他になんか言うことないのかよ。」
ちょっと顔を赤らめて目を逸らしているナリク。
「やっぱり可愛い!」
そう言って、つい条件反射的にアリミナールはナリクに抱き着いてしまった。それをすかさず、バリバリと引きはがしたのは一緒にいたクローだった。