第七十五話 世界征服への一歩?
アリミナールは、見知らぬ男性を家の中に入れたことに対して警戒はしていたものの、自分が魔法を使えることもあり、負けることはないと考えていた。それに、迷子の彼は自分からアリミナールに声をかけることはせずに、一人で道を探そうとしていたため、自分目的ではないと感じたからだ。
しばらくして玄関が開く音がした。その音を聞いて出迎えようとしたときにアリミナールは転んでしまった。迷子の男性はそんな私に手を差し伸べてくれた時だった。
「アリミナール様!危ない!」
リリーダは男性をみてアリミナールに襲い掛かろうとしているように見えたのだろう。いきなり水魔法を発動させてしまった。しかも、動揺したのか全力だった。
私もノイシー先生も突然のことで、すぐには行動が起こせなかった。一瞬のことだった。目の前にあった家は全壊。私は咄嗟に男性と自分を守るように魔法を使用したため、二人とも無傷だった。すぐにリリーダには誤解であることを説明すると、納得したのか男性に対して謝罪を行った。
「ごめんなさい!私てっきりいつもの変態さんだと思って!」
そう、この世界にはロリコンがいるのだ。アリミナールを攫いにくる変態のせいで、リリーダはトラウマになりつつあるのだ。そしてこう語るのだ。
「世界征服すれば、この世の変態さんが消えます!」
今思えば主人公をこんな思考にしてしまったのは、私かもしれないと思い始めてきた。ごめんなさい、リリーダ。
「アリミナール様?」
「ああ、リリーダちゃん。ちょっと昔のこと思い出してた。」
「昔?嫌なことでも思い出したんですか?」
心配そうな顔をしてリリーダがアリミナールの顔をのぞき込む。
「違う、なんでもないよ。」
「もしかして、お父さんとの約束事ですか?」
「え?」
リリーダが真剣な顔をして聞いてきた。
「アリミナール様・・・約束ってなんですか?私のお父さんと、どんな約束をしたんですか?どうして私には相談してくれないんですか?私には言えないことなんですか?」
「ふふ、リリーダちゃんどうしたの?」
「いえ、なんでもありません。」
そう言ったリリーダは、アリミナールには聞こえない声で呟いた。
「この学園になにがあるというんですか・・・。」
リリーダはなにやら考え事をしているようだ。しかし、アリミナールは思い出したことがある。
「それより、リリーダちゃん!生徒会長に言われた開会式の魔法はどうしましょうか?」
部屋の中にリリーダを案内し、紅茶を用意しながら聞いてみた。そろそろ時期が近いからだ。
「まずは、手始めに学園から征服しますか?」
「何言ってるの!?」