第七十三話 攻略対象者の危機
コンコン。
扉をノックする音が部屋に広がった。
アリミナールは焦っていた。いろんな可能性を考えていたからだ。しかし、どうやら今のノックの音はこの部屋のではなかった。
「まずいっ!あなたたちがこの部屋にいるなんて知られたら!」
「おや?今更ですか?」
「あの子に知られたら・・・。」
「「「?」」」
アリミナールは焦っていた。今ここにいるのは攻略対象者達の3人である。もちろん誰が攻略対象者に選ばれているか知らないし、この中の3人の中にはいない可能性だって考えられる。でも、あの子がこの部屋を見たらどうだろうか?あの子がよけいな考えを起こして、イベント発生や、自分のバッドエンドに近づいてしまう可能性だってある。それに、子供の頃にある事件があって、私にとってはトラウマでもある。あの時のことは思い出したくもない。
「さぁ、みなさんここを出てください!私は今熱があるんでした!思い出しました!」
「アリー、それは今更すぎないかな?」
「いいえ!ここにあの子が来たら大変なんですよ!皆さん、好きな人に勘違いなんてされたくないですよね?」
「好きな人って誰のこと?」
普通の疑問のようにケインはアリミナールに聞いてきた。どうやら、今のところケインは攻略されていないのか?
「なんでもいいから急いでください!あの子は危険なんです。」
「もしかしてあの子のことかな?アリーの友達なら、すぐに来れないように用事を押し付けてきたよ。」
ケインは小悪魔のようにかわいく笑う。それがちょっと怖いけど。
「あの子はそんなことでは止まりません!そんな気がするんです。扉からはもう危険かもしれません。窓に階段を作るので!」
そんな時だった。
ドンドン!アリミナールの部屋の扉から音が聞こえた。
「アリミナール様!入りますね?」
ガチャっ。ガチャ、ガチャ。
どうやらケインが入る時に扉にカギをかけてくれたらしく、すぐに扉は開かなかった。
「アリミナール様?」
ケインありがとう!鍵かけてくれてたのね!命の恩人!神様~!!
私は小声で3人に話しかける。
「今すぐここから出てください。あの子に会ったら大変です。この階段は火で出来ていますが、燃えたりしません。」
窓を開けて、火の魔法を使い一瞬で階段を作った。
「アリミナール?何をそんなに怯えているんだ?」
グランが聞いてきた。