第七十一話 ハジメマシテ
「兄さんは学年も違うのにどうやって聞きつけたんですか?」
「生徒会の力ってやつかな。諦めてケインも入らないか?」
「あの生徒会長嫌いなんですよね。兄さんが生徒会長になったらやります。」
グランとケインの二人の兄弟が仲睦まじく話していた。もちろん、授業も終了している。そんな中二人が向かっているのは自分たちの寮ではない。
寮母さんとは面識があったケイン。それもあるのと、グランが何やら渡している。賄賂のようにさえ感じてしまうとケインは思っていた。
寮の階段を上りアリミナールの部屋の前に来た。しかし、前を歩いていたグランが立ち止まったのをみてケインは不思議に思った。
「兄さん、どうしました?」
「男の声がする。」
「え!?」
ナリクを殴るわけにはいかないので心を落ち着かせるアリミナール。
「ありがとう。」
「え?」
「だから、ありがとう。」
なぜかツンデレ君にお礼を言われてしまった。ツンはどこに?
「っ、かわいい!」
「何言ってんだ!」
ガチャっ。なぜかアリミナールの部屋の扉が自然に空いてしまった。扉のほうを振り向くと見慣れた二人の姿があった。
「え?」
「何をしているんですか?」
私が間抜けなことを言っていると扉の前にいるグランが話しかけてきた。どうやら二人を見るに授業は終了していたようだ。
「グラン様、ケイン様、えっと不法侵入ですか?」
「アリー、こいつ誰ですか?」
ケインは私の言葉も耳に入っていないようだ。
「ナリク君です。ナリク君、こちらはグラン・アンジャードルタ様とケイン・アンジャードルタ様です。」
この状況に全くついていけない。ここは女子寮なのになぜ二人がいるんだろう?
「二人で何をしていたんですか?アリミナールは熱を出して休んでいると聞いたんですが。」
グランはそう言って近づいてきた。ケインも察したのか部屋の扉を閉めた。
「寮母さんには秘密にしてくださいね?怪我をしていたので無理やり連れてきてしまいました。」
グランは包帯をしているナリクをチラ見して確認したようだ。
「なるほど。これは、寮母さんが聞いたらお怒りだろうな?」
「グラン様、そこは納得して秘密にしてくれるのでは?」
「アリー、知らない人を部屋に入れるなんて何考えてるんですか。」
ケインはわかりやすく怒っているようだ。