第七話 人はそれをブラコンという
ケイン・アンジャードルタは、完璧超人の兄を持つ。幼少の頃より周りから比べられてはいたが、それを疎むこともなく成長することが出来たのは、グランのケインに対する対応が、兄として至極真っ当であったからではないだろうか。弟を可愛がり、甘やかし、そして弟タイプポジションのケイン・アンジャードルタとして育ったといえる。
「兄さまはすごいや。僕、兄さまのような人になりたい。」ギュッと兄を抱きしめれば。
「よしよし、ケインのほうがすごいよ。」と人形のような顔で笑顔を作れば弟は笑顔になる。
アリミナールは考えた。ゲーム内でのケイン・アンジャードルタのことを。弟タイプポジションのケインであったが、そうか、運営が考えていたのは兄を慕う弟であったのか。
「もしかしてブラコンってやつなのかな。」と心の中で呟く。
現在、アリミナール・ブラックレス家の屋敷にて兄に抱き着き、アリミナールを敵と判断したのか、睨みつけている少年がいる。私のストライクゾーンはツンデレだけど、弟タイプもかわいいかもしれない、と思ったのは秘密だ。
「わぁ~とても可愛らしい方ですね。グラン様に抱き着いているこの方は、もちろんケイン様ですよね?はじめましてケイン様、アリミナール・ブラックレスと申します。」
「フン。話しかけるな。兄さまの敵は僕の敵だ!」
「こら、ケイン!アリミナールは僕の友達なんだから、優しくしてあげなさい。」
「兄さまの友達!?そんな、こんなちっこい女が友達なんて。兄さまには僕がいるんだから友達なんて必要ありません。」
あ、ブラコンに間違いないわ。グラン様とはまた違った可愛らしいお顔をしているのね。あ、目が合った。
「グラン様、こんな素敵な弟さんがいるなんで羨ましいですね。」
兄弟のいなかった私は普通に羨ましいと思っている。
「ふふ、そうですか?それでしたら、僕と結婚すれば弟ができますよ?」
「なっ!兄さまと結婚なんて許しません!それなら僕が結婚してあげます。」
私の未来のために、婚約者を作ることはバッドエンドしか引き起こさない。この二人、私の敵であったのか、許すまじ!
ケイン・アンジャードルタの登場で騒がしくなったためグランとケインはしばらくして帰っていった。
運命とはすごいもので、二人の登場で私には焦りがあった。しかし、現在の状況を考えるとアリミナールというか私、悪役令嬢らしいことしてないな。