第六十八話 悪役令嬢と庶民の味
周りの景色を見ながら、散歩の気分だった。1時間はあっという間にきて町が見えてきた。
「町だぁ!」
アリミナールになってから16年、外の状況を全く知らない。町をみるのでさえ珍しいくらいだ。こんなに心が高鳴る瞬間があっただろうか。町、人、お店、なんでもある!
町の醍醐味は買い食いだよね。そんなことを考えていた私はいろんなお店に入っては購入していた。普段では食べられない唐揚げみたいなものや、甘いお菓子、私幸せ。まさかこんな庶民的なことでこんなに心躍る展開とは思わなかった。前世では庶民的な食べ物が一番好きだったからだな。この世界に来て豪華な食事はあっても、こんな庶民的なものはなかった。あ~美味しい。そんな時、いかにもな恰好をした変な人がいた。
「もし、お嬢さん。心はどうしたんだい?」
きたー!物語においていかにもな魔法使いみたいな恰好した女が話かけてきた!よく見ると占い師のような佇まいだ。
「高い壺とかは買いませんよ?」
アリミナールはそう答える。
「押し売りじゃないんだが。」
なんだ違うのか。占い師っていったら怪しいイメージしかなかった。
「えっと、何がないって言いましたか?」
「心だよ。ぽっかり抜けてるね?」
「えっと、心無い人間と思われているんですか?怒りますよ?」
「ふ~む。気のせいかね?ちょっと気になるから、占いやってかないか?」
ぼったくりされても困るなと考えていると。
「お代はいらないよ。」
「お願いします!」
「こう見えてわたしゃ本物なんだよ。あんた魔法使えるな?それもかなり強い。」
「・・・。」
「あんたの周りにはたくさんの運命が転がっている。どの道に進もうがあんたの自由さ。」
「・・・。」
「なんだい、当たって声も出ないかい?」
「・・?当たってないですけど。」
「なに!?」
「単に予想できただけですよね?当たり障りのないこと言われているだけ。占いの基本みたいな。」
「困ったお嬢さんだね。」
なんだか呆れられているように感じた。
「一つだけは真剣に聞きな。心がぽっかりないと言ったが、全部じゃない。でも、お前さん切り離したものは重いよ。軽く考えていたら痛い目見るよ。」
「よく分からないですね?」
「ふん。まぁいいさ。それより、私の占いが正しければあんた今すぐ帰らないと危険だよ。脱獄でもしてきたのかい?」
「子供の私が犯罪者に見えますか?ふふ、まぁ占いのお礼にこのお菓子をあげますよ。では。」