第六十五話 かわいいは禁句
「少し声が聞こえて、女性が泣いて走って行きました。」
「そう。」
「良かったのですか?」
「気にすることないよ。」
ひたすら返ってくる言葉は優しい面持ちで返答している。
「職員室に用事があるので、失礼します。」
「待って。」
立ち去ろうとグランを通り越そうとしていたため、アリミナールは腕を掴まれた。
「・・・。」
下をうつむいたまま話さないし、離さないグラン。
「グラン様は、完璧超人王子様だと思っていました。女性を振るのは下手なんですね。ふふっ。」
冗談まじりにそう言ってみた。
「完璧超人?まさか、苦手なこともあるし、嫌いな人もいる。知らなかったのか?」
「ええ、だって友達ではないですから。」
「まだ、友達にもなれないか。困ったな。」
「美少年の顔が台無しですよ?せっかくかわいい顔しているのに。」
「かわいいっていうな。俺は怒っていいんだよな?」
「はい。怒ってください。」
少しグランの表情も和らいだようだ。
「もう行きます。」
「ああ、またゆっくり話そう。」
「嫌です。」
「今のは聞こえなった。」
どうやら攻略対象者たちは話しを聞かない人が多いようだ。
職員室にて提出物を無事に届けることができた。
ふとアリミナールは思い立ってしまった。さきほど見た、悪役令嬢のような女の子をみて私とは違うと。職員室、学園生活、子供、これって使えるのではないかと。良からぬことを考え付いたように、二ヤリと一人で笑っていた。
私はバッドエンドから逃げ回るばかり。転生をして、ゲームの世界といえど二度目の人生を送っている。前世のことを何もかも覚えていることはなくても、やり残したことは覚えている。たとえばツンデレ君にクッキーを作っている過程。子供の頃に悪戯を考えるのもあったな。この学園にはお父様はいない。せめて巻き込まれるイベントごとは避けられなくても、アリミナールの人生は今私のものだ。
「悪役がなんだ!バッドエンドがなんだ!グダグダ悩むなんてアリミナール・ブラックレスじゃない!人生楽しんだもの勝ちだ!」
まずは、作戦の計画を綿密に立てなければならない。なぜなら、アリミナールには一番避けては通れない最大の難所が存在する。それは主人公!大切な友人をこんなふうに言うのはあれだが、なにかと距離が近くて監視されているようだ。
だが、私には前世の記憶が味方になる。漫画やアニメでは、定番であろうあの手はどこの世界も共通だ。




