第六十三話 お助けキャラは嗤う
「いや~本当に危なかった!」
「・・・。」
「あの女のせいで実家に帰るまで追いつめられるとはな~。え、なんであの女ってわかったかって?一応子供の頃から知っているからな。なんか多方面から追いつめられたんだけど、なんとかしてきた。数日で方がつくとは思わなかったけど。どうせ婚約者の権利が一番の目的ってわかってたからな。」
「・・・。」
「ははっ!アリミナールって顔に書いてあるからわかりやすいな。話しかけると余計あの女に狙われるって心配してんのか?こうみえて、やられたらやり返すほうが好きなんだよな。」
「やり返す?」
「アリミナールと仲良くしてることがあいつにやり返すってこと。」
数日後にお助けキャラであるクロー・ナシュウェルは学園に戻ってきた。主人公がお助けキャラを貶めることがすでに異例である。その貶めにも負けずクローは数日で帰ってくること自体はすごいが、運命が攻略対象者を戻したということも考えられる。あと、気になるのが、クローは本来お助けキャラで主人公を助ける位置になるのだが、現在その役を放棄しているとしか考えられない。主人公に復讐でもする気か?とりあえず、今ある危機を知らせてあげようと思う。
「うしろ。」
「え?」
仁王立ちでリリーダは立っていた。
「やり返すってなんですか?アリミナール様に迷惑かけないでくださいね。」
どうやらリリーダはお怒りのようだ。
「先生に提出物あるから、リリーダちゃんは先に食堂行ってて!」
「はい。」
そう告げて私は職員室を目指して歩いていた。校舎と職員室をつなぐ通路に差し掛かる時に男の子と女の子が二人で話している姿がある。なにやら怪しい雰囲気がして、通路に出ることはせずに、しばらく扉の裏に隠れることにした。隠れたのは正解のようだ。女の子のほうが怒っている声がするため、面倒事はごめんだと考えていた。
「だから、おかしいのです!なにかいけないことをしまして?私はもっともあなたに相応しいはずです!」
おや、女の子のほうは強気のようだ。まるで悪役令嬢みたい。
「・・・。」
男の子のほうは黙っちゃったよ。気圧されたのかな?
「もっとよく考えてください!私がいれば、何も心配はいりません!」
女の子は変わらず叫んでいるが、男の子は黙ったまま。気弱な子なのかな?
「どうか、真剣に考えてください!わっ私は、貴方様のことをお慕いしているんです!」