第五十八話 推しキャラのためならば
ついにこの時がきた。私の正義、そう、ツンデレは正義なのだ!
きゃー!かわいい、かわいい、かわいい!何度みてもかわいい。癒される。これほどツンデレを愛してしまうなんて、私の頭はかなり壊れている。いや、腐っているわ。もうなんでも許す。私が悪役だろうが、アリミナールだろうが。私はこの時のために生きてきたんじゃないだろうか。生でツンデレいるって最高。だってさ、普通に生きててツンデレ拝むことなくない?このかわいさわからないなんて人生損してる。断言できる。ナリク君はもうアイドルよ。その辺のアイドルよりかわいいよ。せっかく転生したんだから、バッドエンドとか考えている場合じゃないわ。前世で出来なかった、青春的な何かを少しはしたい。
今の状況を整理するよ。ナリク君は現在、攻略対象者の片鱗さえないわ。つまり、アリミナールである私との接点なんて一切ないのよ。この手を使わない手はない。私のことを知ってもらわなくていいから、むしろちょっとお話しできるだけで幸せなんで、無理矢理近づきたいと思います。もう決めた。今決めた。恥ずかしいけど、ツンデレを拝むため!アリミナール頑張ります!
ただ姿を一目みただけなのに、私はある決心をした。
「あう~おかえりなさい~アリミナール様~。」
「リリーダちゃん、ただいま。もう体調はいいの?」
「自分の水魔法使ったら元気になっていました~。アリミナール様がいなくて寂しくて寂しくて。」
一応約束もしていたため、授業が終わるや否や急いで寮まで戻ってきた。体温を確かめたが本当のことのようだ。
ならばと一安心して、私はあそこへ向かった。
「アリミナール様?何をしてるんですか?」
「爆発実験よ。」
「なるほど。」
ボン!ボン!
「リリーダちゃんはまだ寝てていいよ。」
「わかりました。実験頑張ってください。」
それは、寮にある調理室の一角、さきほどから本当に爆発実験をしているようにしか見えないが、アリミナールは料理を作っていた。
「ふふふ。ここで料理をしていない人生が仇となったか。本当に爆発しかしない。いえ、私は悪役令嬢アリミナール・ブラックレスよ。一度の失敗二度の失敗なんて、気にしないわ。推しキャラのためならこんなこと苦でもない!」
ここにきて自分のオタク精神が生き生きするとは思わなかった。だってこの世界アニメも漫画もないしちょっと時代遅れよね。魔法あるけど。