第五十六話 主人公はイベントも消滅させる
「ふぇぇぇ、いや、いや、嫌。」
アリミナールの目の前には風邪で寝込んでいるリリーダの姿があった。もちろん、この部屋はアリミナールの部屋である。風邪を隠して、本日もアリミナールを起こしに来ていたがバレて捕まった。
「リリーダちゃん、風邪なんですよ?いくらリリーダちゃんのお願いでも、今日はゆっくり休んでください。」
「だめなのです。私も連れてってください。」
「そんな顔してもダメです。」
「アリミナールさまぁ~。行くんです~。」
「今日はお休みです。」
「じゃぁ、じゃぁアリミナール様、すっと傍にいて?」
目を潤ませて見つめてくる。私はこの顔に弱い。
「私は休めません。」
「ふぇぇぇ。アリミナール様が傍にいてくれないと寂しくて死んじゃいます。」
「かわいい顔もダメ!授業が終わればすぐに帰ってきますから。ね?」
「ふぐっ。約束ですよ?」
「はい。」
そうしてアリミナールの部屋に、リリーダを寝かしつけて部屋を出ることにした。部屋に残されたリリーダは、風邪を引いたことを後悔している。
「守るって決めたのに。ああ、アリミナール様がいなくなってしまったから熱が上がってきた。寂しいよ~。アリミナール様~。」
その頃のアリミナール。
「ふふ、実はリリーダちゃんの風邪ってイベントがあったのよね。誰のルートか忘れたけど、これ以上リリーダからイベントを奪っちゃダメよね。」
アリミナールはそんなことを考えていた。しかし、放課後になり同じクラスという理由でプリントを届けに来たある攻略対象者がいたが、リリーダの部屋は不在のためイベントは発生しなかったのは誰も知らない。
本日はリリーダ不在で、アリミナールの学園生活を開始する。何が起きているのか、普段はリリーダと過ごすため誰にも声をかけられないのだが、なぜか見知らぬ人から「おはようございます。」だの、「本日はお一人ですか?」と、声をかけられている。返事を返せば、相手は暖かい目をしているように感じてしまう。男女関係なく声をかけられるのでアリミナールは戸惑ってしまう。とりあえず、壁爆破のこともあるので周りにはお嬢様モードで、笑顔でいるよう心掛ける。教室の席についても同じことが続いた。リリーダ不在がすでに周知の事実なのだろうか?そんなに恐れられる主人公ってどういうことなんですか?はい、私のせいですよね。育て方を間違えた親ってこんな気持ちなのかな。