第五十二話 いじめられなきゃ始まらない
「これより、合同魔法訓練をはじめる。」
アリミナールとリリーダはクラスが分かれている。しかし、特異体質のものだけを集めた合同訓練が存在し、学年問わず全員が集合となる。全員と言ってもアリミナールとリリーダとあとは2人だけ。2年生と3年生から一人だ。
初恋レディにはリリーダとアリミナールの出会いというか、イベントが存在する。しかし、この授業について語られたことはない。
「アリミナール様と授業が受けられるなんて久しぶりです!」
「楽しみですね。」
「はーい、それじゃあ新顔の二人は魔法を見せてもらうよ!」
魔法合同訓練の先生は女性のようだ。
「まずはどのくらいできるか見たいから、全力でお願いね。こっち向きなら学園側でもないし、壁があるから大丈夫よ。」
私は今ほどリリーダちゃんに魔法指導したことを後悔したことはない。あの子と私の魔法訓練は、ノイシー先生にも本気で世界征服考えてるんじゃないかと不安にしてしまうほどである。
つまりは、リリーダ・キャラベルは加減を知らない。
先生もまさか100m以上離れた壁まで魔法がいくとは思わなかったのだろう、しかもまだ強さは衰えない。
「ちょっと!リリーダちゃん!」
さすがの私も自分の魔法を使い、リリーダの魔法を打ち消した。学園の壁崩壊。もちろん、授業は強制終了。先生から言われたことは一つ。
「アリミナールさん、どうかリリーダ・キャラベルの傍を離れないでください。」涙目になって先生がそんなことを言っている。どうやらここまでの魔法はこの世界ではなかなか存在しないらしい。
先生方の話し合いにて、私がリリーダの魔法を打ち消したことも考慮し、クラス替えまで検討しているようだ。
今回の騒ぎは学園中に知れ渡った。そのことにより、ひとつのイベントに終止符が打たれた。そう、学園一強いリリーダ・キャラベルをいじめに来るバカはいない。
そろそろ私も気づき始める。主人公を最強に育ててしまったことで攻略対象者とか言っている場合じゃない。いじめイベントが発生しないため、ストーリー自体が進まない。ここは、ゲームの世界のような進行は望めない。嬉しいことであるが、主人公をこうしてしまった原因は私にあるので、複雑だ。
「私はアリミナール様の傍にいられれば幸せです。」
喜んでいるようならいいか。いや、まさかとは思うけど、この顔わざとやったとか?主人公の力に恐怖を感じた。