第四十八話 ゲームを開始します
まるでナンパの軽いノリのように私、アリミナール・ブラックレスに話しかける人が一人いた。ゲームに関わる人物であれば忘れるはずもない。
「クロー君、ですよね?」
「あ~良かった!名前まで覚えてもらってるなんて嬉しいな。」
そう、初恋レディの登場人物で唯一アリミナールと同じクラスにいるお助けキャラの存在は忘れない。
「クロー・ナシュウェル、よろしくね。」
「アリミナール・ブラックレスです。リリーダ・キャラベルさんはお隣のクラスにいますよ?」
「へぇ~あいつも来たんだ。」
「・・・?」
「どうしたの?」
「いえ、なんでもありません。」
「ねぇ、アリミナールって呼ぶね!俺のこともクローでいいよ。お昼は食堂?」
「はい。」
「じゃあ一緒に食べよ?話したいこともあるしさ。」
「嫌です。」
「え~いいじゃん!アリミナールも俺に聞きたいこととかあるだろ?」
ないと言えばウソになる。今後の重要な人物であるこの男には要注意しなければいけない。
「わかりました。ですが一つ訂正してください。」
「ん?何を?」
「世界征服のことは忘れてください!」
子供の頃とはいえ恥ずかしいことを思い出してしまって、顔が赤くなる。クローはそんなアリミナールをみて笑っている。クロー・ナシュウェルは主人公のお助けキャラ、細かい設定は覚えていないが、いつもニコニコしており緩い感じの話し方が特徴としかわからない。警戒は十分に必要だ。そしてもう一つ、この人物に付け加えるべき設定が見つかった。
「アリミナールと会った頃ってまだ10歳だったのに、なんでか忘れなかったんだよね。世界征服が強烈だったからかな?あ、この話は忘れてほしいんだっけ?」
不貞腐れた顔をするがなんせアリミナールの顔に迫力は存在しない。豪華な昼食を前にアリミナールはクローの話を聞きながら食事することにした。
「なんか、見た目あんまり成長してないな?ま、幼くてかわいいと思うけど。俺、お前のこともっとよく知りたいって思ってるんだぜ?」
褒めてくれているのか貶しているのか、返事に困ることを言われる。クローのほうは子供の頃より大人らしくなり、物腰の柔らかそうな表情で女性人気は間違いないだろう。お助けキャラもそうだけど、この学園の顔面偏差値おかしい。脇役たちもカッコいいっておかしい。あ、クローと話してるの忘れてた。
「なぜですか?」
「え?わざと聞いてる?婚約者になったからには相手のこと知りたいって思うだろ?」