第四十一話 とりあえず悪役なので
「もしかして、すごい勘違いしてたのかな?」
とりあえずアリミナールはコクリと頷いた。
「うわぁ~なんかごめんね!」
お助けキャラは顔を赤くして恥ずかしそうにしている。
「何かあったんですか?」
一人、リリーダちゃんだけ頭にはてなを浮かべている。
「実は先ほど、この方に迷子だと思われて町まで案内してもらってたんです。」
「ふぇぇぇ!あ、この子は・・」
バタン!急に玄関の扉が開いた音がした。
「二人とも、良かった。準備して、ここをすぐ移動するよ。あ、クロー君ごめん、君の仕事はなくなった。」
「わかりました。」
アリミナールだけは何も言わずに部屋に戻り荷物を取りに行った。
「お父さん、どうしたんですか?」
「ここに危ない人が来るみたいなんだ。本当はお前を宿に置いていくつもりだったけど、アリミナールちゃんと離れたくないだろ?」
「はい!私も行きます!」
「あの~、状況がよくわからないのは俺だけっすか?」
「君は早く家に帰りなさい!このことは他言無用だよ。」
その時だった。ガタガタ、ドスン!2階から物音がした。
「まさか!リリーダたちはここにいるんだ!絶対に動くな!」そう言ってノイシー先生は2階に上がっていった。
ノイシー先生はこの光景を一生忘れることはないだろう。
小さい少女が大の大人を床に倒して足で踏みつけている姿がそこにあった。魔法を使ったのか、大人のほうには縄のように炎が巻き付いている。
「死にたくなければ小指ひとつ動いてはいけませんよ。」不敵に嗤う少女がそこにいた。
「まだ魔法を習いたてで、気が緩むとつい炎が言うことを聞かないんですよね。あら、先生!この人いきなり襲ってきて、どうしましょうか?」
「ふぅ、無事で良かったよ。後は任せて。」
「ひっ!た、助けてくれ!この子供に殺される!」
「困ったな~自分は君がここで死んでもなんとも思わないんだよ~大切な子を襲おうとしたような最低野郎には、死がお似合いじゃないかな~でもそこまで言えばわかるよね?君は誰に雇われたのかな?」
「んなもん!」
「なるほど、あの有名な変態男爵か。」
「っつ!?」
「二人で楽しいひと時を過ごそうか。」
アリミナールは襲ってきた相手に対して、かなり悪役令嬢らしさを出したが、ノイシー先生の最後の言葉には寒気がした。
「お父さん、遅いですね。クローは帰っていいって言われたのになんでいるんですか?」