第三十七話 悪戯は子供の嗜み②
燃え盛る炎を前に、ノイシー・キャラベルは立ち尽くしていた。
「なんなんだ、これは。」
木造の家に戻ってみれば、まるで自分を迎えているように炎の通り道ができている。しかし、その炎は地面の草を燃やしてはいない。家の玄関まで案内するように炎は燃えている。これを行っている者は誰かは一目瞭然。しかし、ノイシー・キャラベルは驚きを隠せない。扉の前まで行き一呼吸する、そして扉を開けた。
ばしゃーーーーーっつ!
頭上から大量の水が落ちてきた。もちろん、これにもノイシー・キャラベルは身に覚えがあった。全身びしょぬれであったが、驚きを隠せないでいる。しかし誰の姿もない。
気づくと腕には身に覚えのないものが巻き付いている。それは炎であった。まるで腕輪のように巻き付いている。恐る恐る触ってみるが、熱さを感じないどころか触れることすらできなかった。真っ暗な部屋の中、腕にある炎だけが明かりのようだ。
玄関から広間の部屋に入るとまた炎があった。宙に浮いており、ふよふよと蝶々のような動きをみせる。それはまるでついてこいと言っているように感じた。
「ついて来いってことか?」
ノイシー・キャラベルはその炎に誘われるように歩を進めた。案内されるまま、次の部屋に入ると、ばしゃーーーーー。また濡れた。
「こんなに正確に落とすとは~。」
ノイシー・キャラベルは怒るでもなく感心している。自分が知る人物はこんなに上手くタイミングを計れるような使い手ではない。感心さえしていた。
そのまま案内されるままたどり着いたのは、お風呂場であった。すでに準備が整っていた。追いかけていた炎が姿を変え、目の前に文字が浮かび上がる。
【おかえり】
そしてノイシー・キャラベルは結論が出る。
「あはは~お風呂に入れってことね~。」
ノイシー・キャラベルがお風呂から上がって部屋を見渡すと、今まで床が水浸しであったはずなのに綺麗に片付いていた。いつも通りに食事の部屋に行くとそこにはいつもの二人の姿があった。とても楽しそうに、笑顔で話している姿をみて安心する。
「アリミナールちゃんもリリーダもすごいな~びっくりしたよ~。」
「お父さん!すごいでしょ!全部アリミナール様と一緒にやったんだよ!」
こんなに楽しそうに話すリリーダはいつぶりだろう。
「リリーダがこんなに魔法を正しく調整したのは初めてだね。アリミナールちゃんに感謝しなきゃ。」