第三十五話 王子様の憂鬱
ゲンシュルタ国では、魔法の特異体質の人を化け物という風習が広がっている。それはこの国で特異体質が生まれなかったことが大きな原因のようだ。アリミナールが特異体質であることは、グランとケインには報告があった。一部の者のみが知らされている。
「グラン、この子なんかかわいいと思うな。性格も良さそうだぞ。」
婚約者候補の紙を持ってグランの父親であるゲンシュルタ国の王は問いかける。
「そんな怖い顔しないでさ、もう婚約者は決めておかないとこれから面倒なんだぞ?お嬢様方から狙われて身動きできなくなるし、できれば私はお前に決めてほしいと思っている。これが違う国なら婚約者なんて勝手に決められているんだからな?」
「あの子はどこにいるんですか?」
「だからな、違う国で魔法を教わっていると言っているだろ?」
「生存確認を所望します。」
「だからな、この国の法律で王族は特異体質とは接触できないんだ。」
「もう話すことはありません。失礼します。」
扉を開けてグランは出て行ってしまった。
「珍しいこともあるんだな。完璧なやつだと思っていたが。」そんな言葉を国の王は残して部屋の片づけを行う。
「ケイン、この子なんてかわいいと思うな。性格も良さそうじゃない?」
婚約者候補の紙を持ってケインの母親、ゲンシュルタ国の王妃は問いかける。
「ケイン、かわいい顔が台無しだわ。どうしたの?」
「母上、あの子はどこに隠したんですか?」
「わからないわ。」
「はぁ、失礼します。」
扉を開けてケインは出て行ってしまった。
「困ったわ。どちらの息子を応援すべきかしら。」うきうきと楽しそうに王妃は部屋の片づけを行う。
ジェット国では、魔法の特異体質の人を守り神という。魔法で守る者として言い伝えられている。グランとケインに極秘であるが、ガイはアリミナールが特異体質であることを言われていた。しかし、二人と同じように居場所を確認できていない。
「ガイ様、彼が魔法の特異体質の者です。」
強面の護衛は人を連れてきた。
「・・ありがとう、下がってください。」
「はじめまして、ガイ様。お初にお目にかかります、ノイシー・キャラベルです。」
「急に呼び出して申し訳ありません。特異体質について伺いたいことがあります。あと・・・。」
「特異体質の10歳の女の子?さぁ~自分にはその情報は届いておりません。」
緩い笑顔でノイシーは答える。