第三十三話 嫌いじゃない
私の名前はリリーダ・キャラベル。お父さんのノイシー・キャラベルがとあるお嬢様に魔法を教えるということで、世話係を任されていた。本当は、お嬢様という人は自分のことが何もできない人だから、と世話係を任される予定だった。しかし、どうやらそのお嬢様は自分で出来てしまうらしい。もともと人が苦手な私はそれならと、お父さんにお勉強の時間を確認して、出会わないように逃げていた。うまいこと会わないので、もう意地になりつつあることは自分でもわかっていた。どうやら、ある時からお嬢様は私に興味を持ったみたいだ。魔法の勉強の休みは食事時間を狙って私を探している。
「今日はそうきたかっ。」
小声が出てしまった。
本日のお嬢様は台所と食事のテーブルの間に待ち構えているようだ。どちらにも目を配っている。それならと私は正面玄関に行き、食事を玄関に置いて外から扉を叩く。それに気づいてお嬢様は玄関にやってきて扉を開けた。食事が置いてあることに気づいたようだ。私は木の影に隠れながらその様子をみて安心していた。食事を運ぶときのお嬢様の顔は、なぜだか笑顔になっている。まだこの攻防戦が続くのかと思うと一苦労である。
「リリーダ、お前もよくやるね。」
「なっ、なんのことですか?」
「アリミナールちゃんはいい子だよ~わがままお嬢様だったら会わせないつもりだったけど、お前もわかってやってるだろ?」
「な、なんのことだか知りません!」
「へぇ~そのうちアリミナールちゃんに嫌われるんじゃないの~?お父さんはそれでもいいけど。」
「えっ!?」
「本当にリリーダはわかりやすいな~お父さん将来が心配だよ。」
「もう、お父さんは黙ってて!」
意地になって隠れてたら、そのうち嫌われちゃうのかな・・・。いつものように朝早くから木造の建物にたどりついた。朝ごはんの入ったバケツを持って、ゆっくりと外から様子を伺う。どうやらお嬢様はいないようだ。台所をみても、食事のテーブルを見てもいなかった。自分でも落ち込んでいることはわかったがどうにも出来なかった。準備が終了したので玄関から外に出た。
玄関の扉を開けた瞬間私は目を見開いた。そこには同じく驚いたお嬢様が立っていた。でも、すぐにお嬢様は笑顔に変わった。そして一言。
「いつもありがとう。」
ただそれだけの言葉を残した。
家に帰り、これでもうお嬢様は追ってこないのかとなぜか悲しくなった。