第三十話 おとぎ話は突然に
「ノイシー先生、ありがとう。」
この一言にどれだけ安心させられるだろう。屋敷の使用人たちは私の魔法に驚いてはいたものの、以前と変わらず接してくれる。しかし、それ以上に心配されてしまった。特異体質について、魔法について、何もしらないあの国では化け物と言われていると。今後、誰に何を言われても、気にしてはいけないと言われた。
「神様からの贈り物、才能と一緒で生まれ持ったもの、生活の必需品、精神的な物、人々はいろんな魔法の捉え方をしたんだよ。昔の人は特異体質を、悪魔からの授かりものだという人もいた。いろんな学術書があるけど、どれも空想なんだよ。自分はね、ものの考え方は自由だと思っているよ。その人が魔法は才能だと思うなら、その人の才能が開花しただけさ。まぁ、人それぞれってこと。正解はわからないからね。」
「なんとなくわかりました。人にとって目や口があるのと一緒で、生まれた瞬間に持っているんですね。」
「曖昧でいいんだよ。そうだ、物語を話してあげよう。」
【生まれたよ。ここにいるよ。ここにあるんだよ。それは心の中にあるんだよ。誰でも持っているんだよ。誰でもなれるんだよ。誰でも感じることが出来るんだよ。想う心が必要なんだよ。心の中に必要なんだよ。ただそこにあるんだよ。君があるといえばここにあるんだよ。誰かがあるといえばここにあるんだよ。必要なその時のために・・・あるんだよ。】
「これはある国の絵本なんだけど、一番魔法について的を射てると思っているんだ。抽象的すぎてわからないかもしれないけど、アリミナールちゃんには一番いいかな。」
その絵本に登場しているのは恐竜の子供みたいな可愛らしい絵が描かれていた。異国の絵本であるが、翻訳されている。
「こころ・・。では私の熱い心が、魔法に影響したのかもしれませんね。」
「あ~そういわれるとなんかずるいな~。」
その後も魔法に関する物語や、言い伝えをいくつか聞いたがキリがないらしい。
「はい~今日は終了~。とりあえずいくつか絵本は渡しておくから好きな時に読むといいよ。」
「ありがとうございました。」
魔法の勉強が終了すると、食事の部屋にはすでにご飯が準備されている。ノイシー先生の娘さんの姿を見ていないので、少し疑いそうになるがあまり気にしないことにした。出てくる料理はとても美味しい。




