第二十九話 大切な言葉
「ノイシー先生、あそこにある魔獣の森って書いてある看板を読んだだけです。」
「あはは~自分が書きました~。」
「楽しそうな森ですね。」
「え~ごめんね~期待させて悪いけど、この森には何もいないだけなんだよ~。」
「そうでしたか・・少し残念です。」
てっきり魔獣と魔法対決とかあるのかと思った。世の中そんな世界あるわけないよね。いや、魔法ある時点ですごいことだけど。
自分の部屋に案内され、荷物を簡単に整理した。屋敷に比べるとかなり狭いが、私にはちょうどいいように感じる。
「ノイシー先生!終わりました。私、自宅以外での生活が初めてで、よければ食事や掃除も教えていただきたいのですが。」
「え~アリミナールちゃんまじめ!自分も食事は作れないから、娘が持ってきてくれることになってるよ~。妻は他界してるから、意外と娘が生活面ではしっかりしてる。」
「そうでしたか。娘さんもこの家に?」
「いや、近くの町に親戚と住んでいるんだ~。食事運びと掃除に来るけど、自分達がいない時間にやってくることにしている。知らない人が苦手だから許してね~。」
「わかりました。」
「これは細かい予定表だよ~。今日は疲れただろうから、しっかり明日のために休憩してね~。クンクン、食事はもう届いているみたいだね。」
朝目覚めると支度をするメイドはいない。しかし自分で身支度をして、アリミナールは1階に降りる。
「おはようございます。」
「やっほ~。良かった~自分で身支度できるんだね~。髪の毛結んでかわいいね~。」
「ふふ、ノイシー先生はぼさぼさですね。」
ノイシー・キャラベルは長身でヒョロヒョロしており、髪も昨日と違い手入れをしてないようだ。おそらくこれが本来の日常なのだろう。すでに朝食が用意されている。
「まずは、勉強のほうからはじめるよ。本来の魔法についての知識があったほうが、制御するのに困らないからね。」
まさに教師であった。少し頼りなさそうな外見をしていたが、魔法のことになると真剣なようだ。少し驚いてしまったが、しっかりと話を聞くことにした。
「誰しもが授かる魔法、しかし君のような特異体質と呼ばれる子がいることも確かだ。しかし、いまだ魔法についての正確な情報は得られていない。でも、けっしてみんなと違うからと言って、化け物ではないんだよ。」
その顔は、どこか安心させられるような表情をしていた。