第二十七話 教師は突然に
特異体質というものらしい。1万人に1人いるか、いないか。あの後お父様は数日寝込んだ。特異体質のことを化け物という人もいるらしい。私は化け物だったのか、少し落ち込んでしまったが、ある意味魔法使えるってすごいことじゃんと思考を変えた。庭の後処理は使用人たちがなんとか立て直してくれている。
「魔法の専門の方が隣の国に?」
「ああ、このゲンシュルタ国では魔法に関する専門的なことは何も教わらない。できればこの屋敷で面倒を見てもらいたいが、先方にも仕事があるようだ。気難しい方みたいで、使用人の一切を連れていくことは出来ない。アリーが一人で来るならご教授してくれるそうだ。どうする?」
「わかりました。行きます。」
「そうか、寂しく・・ざびじぐなるぅぅぅ。」
泣き出すお父様を置いて部屋に戻ることにした。
この屋敷から逃げるチャンスではないだろうか。でも、この強大な力を制御できないと危険人物になるんだから、しっかり教わりに行かないと。まさか、アリミナールというか私なんだけど、こんな経験ができるとは思ってなかった。使用人も連れて行けないとなれば平民の暮らしができるかもしれない、と少しだけ希望が出てきた。お父様には悪いが、屋敷に閉じ込められるのだけは嫌だったから。
「たとえ、魔法の調整のため屋敷に帰ることは出来ないとしても文句はないわね。何年かかろうが、どんとこい!化け物だというなら、魔法を使いこなして世界征服も夢じゃない。いや、こんなの無駄ね。運命という強制力はきっと学園から遠ざけたりしないか。」
自分で言って落ち込んできた。
アリミナールとして過ごしてきて、とても窮屈な生活であると思った。お嬢さまは煌びやかなイメージがあったけど、お父様は親ばかで箱入り娘だと思う。お友達同士のお茶会なんてほとんど参加はさせない。唯一、グラン・ケイン・ガイだけは王族の身分のためお断りはしていないに過ぎない。理由をつけて屋敷を出られることは大きなチャンスだと考えることにしよう。
魔法騒動から1週間が過ぎ、出発の時が来た。
「はじめまして、アリミナールお嬢様。ノイシー・キャラベルといいます。」
やってきた魔法教師は、気難しい方と聞いていたが、ヒョロヒョロの長身で物腰の柔らかそうな男性であった。
「はじめまして、アリミナール・ブラックレスです。本日からお世話になりますのでよろしくお願いします。」