第二十六話 しょぼい魔法
誕生日パーティーが終了し、ケインから聞いた魔法について考えていた。
魔法ってなに!?この世界って魔法あるの?全然覚えてないんだけど。ゲームにそんな内容あったかな。4年前に書いたノートを引っ張りだす。
暗号?いや、なんとなく読めるところもあるけど、私の前世の記憶が消えてきているってことなのかな。ノートも役に立たないか。でも、そうかゲームなんてたくさんしてたから、どんな世界を構成していたかまでは覚えていないのかも。ツンデレは正義は覚えてるけど。
お父様に聞いた話によれば、もともとこの世界の住人は魔法が使えるらしい。でも私が考えたりするような、攻撃とか大規模なものじゃなくて生活必需品みたいな、しょぼい能力しかないらしい。ただどんな能力かはそれぞれ違って種類も把握できていない、この国での魔法は、まだ研究も進んでいないらしい。聞いたところによると、マッチで火をつけるみたいな小さい火や、手を洗うくらいの水が出たり、生活面のサポートにしかならない。だから、魔法を周りで使用する人はほとんどいないらしい。しかし、子供が使用しては万が一があってはならないと、魔法の勉強も10歳にならないと教わらないらしい。そしてはじめての発動も親と一緒に行う。
「アリー、それじゃどんなものか見せるからね。」
「お父様、お部屋でやるんですか?」
「そんな危ないものじゃないからね。アリーが怖いなら初めは外でやるか!」
私とお父様は庭に移動した。
「よし、見ててご覧。」
そう言って父は手のひらを見せるようにして火を見せてくれた。ただ手を開いてみせ、マッチ程の大きさの火を灯した。なんだろう、しょぼいけど魔法だから胸躍る感じがする。
「ただ考えるだけでいいんだよ。簡単さ。ほら手を出してごらん?」
「えっと、考えるだけ、考える。わかりました!」
私は念の為に、誰もいない方向に向けて手を出してみた。あれ、何も起きない。まさか、私だけ魔法ないとかないよね!?しょぼくても魔法は魔法!お願い!
その時だった。
どごごごっごごごごごごごごごっごごごご!!!!!!!!!!!!!!
庭にある、あらゆるものが一瞬だった。一瞬にして火の海となって、一瞬にして焼け野原のような物静かな時が流れた。
「あ、あ、あ、どうして?わた、私、お父様・・。」
お父様のほうに顔を向けたが、そこに父の姿はなく、下を見ると横たわる父。