第二十五話 10歳になりました
前世の私が10歳の頃こんなにおとなしかったかな。私は前世の記憶があるためかもしれないが、周りの同年代も落ち着きのある子が多い。10歳か、嬉しいような悲しいような、未来が不安でしかたない。バッドエンドでなければアリミナール・ブラックレスとして悪役らしいことをしていたかもしれない。あ~誕生日くらい忘れよう。それに、3人の王子のせいで私には同年代の同性の友達はいない。理由は決まっている。
「みて、グラン様だわ。いつみても素敵な方ね。」
「あんなに美しい美貌をもっていては近づけないわ。」
「ケイン様もいらしてる。まだ可愛らしさもあるけど、さすが美形兄弟ね。」
「ガイ様もいらっしゃるなんて珍しいわ。寡黙なところも魅力的です。」
女の子たちが盛り上がっている。たしかに最近は成長して、かわいいよりもカッコいいと言うほうが正しい。何をしてもモテるなんてずるいと思う。それに比べて私なんか、かなり悪役令嬢に近づいてしまったよ。どこに耳を立てても、聞こえてくること言葉は同じ。
「またあのご令嬢ですわ。」
「王子さまたちを侍らせていいご身分だこと。」
「何様のつもりなのかしら。」
はははっ。自分が何もしなくても悪役になれるなんて私の才能かな。今日は誕生日だよね!?せめて聞こえないように言って。私の心はそんなに頑丈じゃないの。
「アリミナール、誕生日おめでとう。」
「アリー、10歳おめでとうございます。」
「・・ドレス似合っているな。」
「ありがとうございます。目立つのでみなさん離れてくれるととても嬉しいですわ。」
「アリミナールはいつも通りだね。」グラン様が笑顔で言って、みんな頷く。
「くすっ、冗談ですわ。もう諦めました。それにしても3人はとても人気者ですね。この分ではすぐにカッコいい王子様として注目の的になりますよ。私も皆さんのように、人から好かれる容姿をしていればよかったです。」
「何言ってるの、アリー。君は一部の人から絶大な人気があるじゃないか。」ケインは答えた。
「一部から人気とは?」
「・・・知らないの?」ガイは驚いている。
『身長の小さいアリミナールは、一部の年上から情熱的な視線を浴びている。』3人は同じことを思った。おそらく、成長しても小さいのは変わらないと思われているから、今後もこの人気は変わらない。
「そういえば、アリーの魔法はなんだったの?」
「まほう?」