番外編 空から降ってきたパンツを拾った①
制服のスカートがひらりと揺れるほどの風が私の周りを通り過ぎた時だった。寮までの道を歩こうと一人でのんびりしていた時にそれは起こった。
おかしい。私は、なぜかパンツを持っている。
聞いてほしい。
私は、なぜかパンツを持っている。
なぜだ。
ここは乙女ゲームだよね?聞いてほしい。如何わしいゲームではないのだ。しかし、乙女ゲームは悪役令嬢に優しくないってことが体現されたのかもしれない。
なぜ私はパンツを持っているかって?よくぞ聞いてくれた!空からパンツ(女性ものの薄桃色)が降ってきた。いや、なんで可愛い女の子じゃないんだよ。あ、私は女の子だから可愛い男の子が降ってくるが正しいのだろうか?
いや、パンツが降ってくるってなんでやねん!
気づいた時にはひらひら頭上を飛んでいたから、無意識になんだろうと手を伸ばせばパンツだったのだ。
パンツ降ってくるってなんだ?
これが男なら喜ぶことだろうか?え、悪役令嬢でも喜ぶべきなのかな?わーい?
そんなわけないですね。ふざけ過ぎました。アリミナールちゃんはそんなことで動揺するような悪役令嬢ちゃんではないのだ。って、私か。
振ってきたパンツをついついまじまじと見てしまった。だって、どんな冗談だって思おうでしょう?普通。だからつい、パンツを広げて見ていたのだ。真顔で。
だがしかし、すぐに現実に戻ることになる。
きっとこのパンツの持ち主がくるだろうとちょっと思考が戻ってきた。
でも、現れたのはなぜか男性だったのだ。だが複数人。誠に遺憾ながら知っている人物であった。いや、ここはせめて知らない人であればどれほどよいだろうか。
攻略対象の5人がそれぞれ現れたのだ。
きっとこの中の誰かが持ち主なのだろう。いや、そんなわけないよね。
「アリー!良かった、見つけた!」
笑顔でケインが寄ってきた。軽やかに近づいてきた彼は一番にアリミナールに近づいた。
え!?パンツを!?パンツを見つけたって言ったの!?ケイン、あなたには失望した。まさかそんな、攻略対象である人物がパンツを見つけたってこんなところで喜んで言う!?男の人って、男の人って・・・・・。
無意識のうちにアリミナールの眉間に皺が寄った。表情の乏しいアリミナールにしてはわかりやすく不快感があらわになった。
「アリミナール、どこにいったのかと思ったよ。」
こちらも笑顔で近寄ってくるのはグランだ。
え、お前もか!?パンツ探してたの!?嘘でしょう!一枚のパンツに男が二人も寄ってくるなんて恐ろしいパンツ!この二人の今をリリーダちゃんには見せられない!お前ら、リリーダの前で土下座してこい!今まで王子だと思ってきたが、パンツの前ではただの男ということか!




