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第二百三十五話 ちょっと何言っているか聞こえませんでした

リリーダが涙目で懇願している。演技うまいな!


「アリミナール様~!」


ドレスについた葉っぱをまき散らしながらリリーダが抱き着いてきた。なんだか久しぶりのぬくもりだ。って、なんで私がリリーダと抱き合っている?あ、仲直りのためか。私が攻略でもされているのかと思ったわ。


「リリーダちゃん、冗談です。ふふ、リリーダちゃんにも冗談で返されちゃいましたね。」


「・・・・はぃ。」


なんだ、今の間は・・・。気のせいだろう。


「リリーダちゃん、どうしてこんなに葉っぱが?本当に迷子に?」


「いえ、お庭の一部が通行止めのようで、裏に周りました。」


さすが主人公というべきか?いや、リリーダちゃんは馬鹿なのか?いや、頭は悪いが馬鹿ではないと信じている。主人公のその行動って他人から見ると規則違反だよね?いや、私も逃亡生活?が多かったからマナーとか割と適当だけどね。


「そう。」


とりあえず少し引きつっているが笑顔でスルーすることにする。これがきっと主人公には必要な要素の一つなのだろう。


「アリミナール様の匂いがする気がして。」


ぼそりと言ったその言葉は、風に掻き消えてしまい聞こえることはなかった。


「アリミナール様はどうしてこちらに?」


「実は、少し体調が悪くなってしまって。」


「え!?大丈夫ですか!?熱ですか!?怪我ですか!?」


「えっと、吐き気があったのですが、もう大丈夫です。でも、まだ落ち着かない気がするので、リリーダちゃんも一緒にここにいてくれませんか?」


少し首を傾げてお願いすれば、ぱぁぁっと明るくなったリリーダが両手を握ってきて首をこくこくと動かして了承してくれる。


「アリミナール様がお元気であればその衣装で一回転してほしかったです。」


「あははっ。気分が優れない時は遠慮したいですね。」


「せっかくアリミナール様を夏休暇で見るためだけに頑張ったのですから、その素敵な姿を目に焼き付けなくてはいけません。よく見せてください。」


優しい笑顔でリリーダがそう言っていたが、何か引っかかった。


「リリーダちゃん・・・・やはりここに来るために賭け事でもしましたね?」


「・・・。えへっ。」


主人公補正がかかっているのか、その分かりやすい対応に可愛いと思ってしまった私は、絆されてしまうところだった。


その後他愛ない話をして、喧嘩した時の内容には触れないようにした。リリーダから聞いてくることもなかった。ここは主人公と悪役令嬢の相容れないゾーンなのかもしれない?私は出来る悪役令嬢だからそこをツッコんだりしないよ!大丈夫、空気読むって大事だよね!



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