第二百三十話 無口悪役令嬢、表情を得る
・・・ショタコンとか微塵も思ってないけど、現在の自分の見た目ってショタコンって思われても何も痛くないかも?アリミナールって見た目普通に妹にしたい女の子一位だよね~。あれ?自分の思考がおかしな方向になっていないか?酔っている?一口で酔うの?私ってチョロすぎない?お酒飲んだらなんでも言うこと聞いちゃいそうな人ってことか?まずい・・・アリミナールの弱点追加ですね。
しばらくするとアリミナールの思考はさらに困ったことになってきた。
ほわぁぁ~。気持ちよくなってきました。
「ふわぁ~、あの長身の方素敵。」
自分よりも幾分か年齢高めの男性を見て至福を味わい始めてしまうアリミナール。
「あ、でも私と並ぶとロリコンです。ロリコンは撲滅すべきです。見なかったことしましょう。」
自分でもわからない間に勝手に口が動くようになりました。そして、誰もが驚くほど笑顔で会場中を見ていた。
目の端に捉えた攻略対象者たちを眺めることにした。
「あや~グラン様との距離が少し近くなってきましたね。バレないうちに動きましょうか?でも、夏休暇の分見ていたいような・・・あ、今度はガイ様が近づいているような~先ほどの天使のこともありますしお話ししたいかな~。はぁ~イケメンは見るだけに限りますね~。あんなにモテモテで羨ましい・・・リリーダあげるのやめようかな~。もう適当にみんなハッピーになってくれないかな~?どうせイケメンには可愛い女の子が勝手に寄ってくるよね~。ふふふ。」
なぜか気分がよくなってきたアリミナールは、誰も周りにいないことをいいことに独り言を続けてしまう。
にこにこ。
にこにこ。
笑顔で過ごしていたアリミナールに、見知らぬ男性の影が近づきました。その人物は、アリミナールも知らない人で、それでもにこにこと笑顔を崩すことをしなかった。
「こんにちは、お嬢さん。」
「はわぁ~。こんにちは~。」
声をかけてきた人物に少し驚きもしたが、笑顔で返答した。
「一人ではつまらなくありませんか?」
「いえ~。お気になさらず~。」
「申し遅れました、私は・・。」
「結構です~。」
「え?」
「何か?」
自己紹介をしようとした男性の言葉をすぐに自分の言葉でかき消した。
「あの。」
「あそこに私のお友達が~。あ、あそこにも~。」
そう言って、男性にグランとガイの二人だとわかるようにアリミナールは指摘した。
表情を引きつらせた男性は「失礼いたしました。」との消え入る言葉でその場を去っていった。
「はわぁ~。これだからロリコンは困るのです~。」
また一人になったアリミナールは本心を隠すことなく独り言を続ける。困ったというわりに、にこにこと表情が崩れることはなかった。




