第二十三話 未来視はどうでもいい
ゲンシュルタ王国、グラン・アンジャードルタは先刻家庭教師による講義を受けていた。その際、まだ子供であるはずの王子に対して今後のことについて説明された。
王族や上流階級の貴族などが中心に集められた学園がある。16歳になればその学園に行って学んでこいとのことだ。アリミナールの未来によれば、自分とケインと同じ学園で出会うと言われていた。
すでにグランは、弟であるケインのことと友人のガイのことについては、アリミナールから聞いていた。そのため未来視というアリミナールのことは疑ってはいなかった。まだ子供ゆえの考えでもあるが。
「王族や貴族が多いのであれば、アリミナールがこの学園に来ること自体が難しいなぁ。」
「兄さま、アリミナールのことは疑っていませんが、この学園に来る未来になったら、本当に危険な時がくるってことですよね?」
「う~ん。アリミナールがいうには一つの選択肢で分岐される未来が変わるって。まず、あの子が悪役令嬢になること自体ありえないと思うんだけど。」
「そうですね。どう考えてもアリーは悪役に向かないし、僕たちが友達になれば、アリーを絶対に悪役にはしません。」
「それに、一つ納得出来ないことがある。」
「僕もです。」
「運命の初恋なんてありえない!」
「それだけはアリーが何と言おうと納得しません。」
まだ見ぬ未来の主人公に対して二人は怒っていた。アリミナールのことは信じているが、これだけは絶対に譲れないようだ。
【運命の人に会えるなんて、そんな確率絶対に逃がしちゃいけません。たとえ、誰の主人公でも。少しの可能性があるなら、あなたの運命になり得る人がそこにいるなら、時が来ればわかります。どうか、他の誰も好きにならないで。その時まで待ってほしい。】
アリミナールは言っていた。グランは、その時のあの子の顔は忘れない。
「そんな未来なら壊してやる。」
そう呟いた声は、誰にも聞こえない。
【ケイン様の一番を知っています。否定はしません。でもどうか未来のことをあきらめないでください。まだ見ぬ主人公は、あなたのたった一人の運命かはわかりませんが、どうかその時を待っていてください。他の方に目移りしたら、許しません。】
アリーは言っていた。どんな表情をしていただろうか、忘れてしまった。
「僕の敵ってことだね。」
そう呟いた声は、誰にも聞こえない。
二人の元にガイからの手紙が届く。